2020-11-04

#18 店長不在のコミュニティカフェをつくる──OSAMPO BASEの挑戦

こんにちは、HITOTOWAの青山です。

私はHITOTOWAのネイバーフットデザイン事業のひとつ、兵庫県・西宮市における団地再開発エリアのエリアマネジメント組織「一般社団法人まちのね浜甲子園」にて、事務局を務めています。

「まちのね浜甲子園」は一般社団法人という法人格を持ち、地権者であるUR都市機構と民間の開発事業者、そして住民が三位一体となって運営する組織です。

将来的にはそのエリアに住まう方々が中心となって運営できるように、立ち上げから6年間、私たちが事務局として伴走支援を行うことになっています。2020年の秋で、設立から4年が経ちました。はじめは現場常駐スタッフもHITOTOWA社員だけでしたが、今ではエリア近隣にお住まいの方々が、有償スタッフとして勤務するようになっています。

今回はそんな「まちのね浜甲子園」が運営するカフェ「OSAMPO BASE」についてお話してみたいと思います。実はこのカフェ、「店長不在のカフェをつくる」「ヴィーガンメニュー」など、運営方法やメニューに数々のこだわりが散りばめられているんです……。その取り組みを、背景にある思いとともにご紹介しましょう。

こだわり抜いたメニューで、地域「外」からも人を呼ぶ

「OSAMPO BASE」は、地域のコミュニティ活動を支える拠点として、2018年に、周辺大学の学生や住民、みんなで作り上げました。私もその立ち上げ当初から企画・運営に携わっています。

「コミュニティカフェ」というと、地域の方が集える喫茶店の総称として昨今、幅広く使われている言葉ですよね。低価格でコーヒーを飲めたり、地域の自治会で運営されているところも多いようです。

一方で、運営面では課題を抱えているところも多いのだとか。本来は「地域のためになる」はずの場所が、結局のところ運営者の過負担や財源不足など、地域に負担をかけてしまっているという声をよく耳にします。

「OSAMPO BASE」立ち上げの際も、事業者から収益性について指摘を受けることがありました。そのため店舗づくりでは、それらの課題を解決することを念頭に置き、お客さま同士のコミュニケーションに直接関わる内装デザインはもとより、飲食店として提供するメニューにもこだわりました。

そのこだわりとは、「動物性食材を使わず、それでも食べ応えたっぷり!」を実現したこと。目玉メニューは、新鮮な野菜をふんだんに使ったファーマーズサラダや、手作りの食パンに自家製の豆腐クリームやフルーツをたっぷり乗せたトーストのブランチです。

その背景にあったのはまず、「野菜じゃお腹はふくれない」とか、「食事には動物性たんぱく質が不可欠」という固定概念を覆したいという気持ち。そして何より、「この場所を『100円コーヒーが飲める地域の人のたまり場』にとどめたくない」という強い思いがありました。「コミュニティカフェ」とわざわざ言わなくても、胸を張ってひとつの魅力的な「カフェ」として紹介できる。思わず、地域の外からも来てみたくなる。そんなメニューにしたかったのです。

逆説的に聞こえるかもしれませんが、本当に地域のためになる場所とは、本質的には地域の外の方々に開いた場所であるべきだと思っています。たとえるなら、伝統工芸のようなもの……。作っている場所は極めてローカルでも、価値を認めてくれる都会の人たちのおかげで需給バランスが保たれている構図と似ています。

スタッフ全員が得意を生かし、「少しずつ経営」する

2020年10月現在、「OSAMPO BASE」では5名のスタッフが働いています。

仕込みが好きな人、発信が得意な人、未知の料理に貪欲にチャレンジする人、お客さんとの会話がうまい人……。おもしろいほどにそれぞれの得意分野が異なるのが特徴です。

開店して2年が経ちましたが、「OSAMPO BASE」は誰が欠けても現在の形は成立しない、ある意味とても属人性の高いお店です。「店長」というポジションがなく、ほとんどのことは全員の合議で決めます。取材を受けるときなどに、「店長はどなたですか?」と聞かれることもありますが、「そのときにスケジュールが合う人」が対応します。

店長不在の経営は、組織運営としては時に非効率なこともあるかもしれません。

ただ、言い換えれば5人のスタッフは5人とも「ただのアルバイト」ではありません。店の課題に対して全員で話し合い、異なる得意分野を持ち寄って、その解決策を探っていく。既定路線のない未知の組織だからこそ、この形をとることで、他にはない役割ややりがいを見出してもらえるのではないか──、そう信じて試行錯誤を続けています。店長不在の経営は、今の私たちがたどり着いたひとつの答えです。

従来の店舗運営では、誰かが店長で、後の人はそれに従うといったピラミッド型の組織が一般的です。しかし、ひとりひとりが責任を分散し個々の得意を発揮できれば、店長不在でも持続的に運営を継続できるのではないでしょうか?

実際に、スタッフの中には「OSAMPO BASEは遊び場だと思っている」と言ってくれた方もいます。大変なことも多いだろうに、遊び場と言い切ってくれる姿勢が嬉しいですね。

店舗運営が家づくりだとすれば、HITOTOWAは基礎と箱だけを準備したにすぎません。そのうえで、使い勝手を知る現在の運営メンバーが、家具を動線の良い配置に変えたり、思い思いに模様替えをしていく──。そういう運営を目指したいと思っています。

次回は、これら「OSAMPO BASE」での経験を含め、「まちのね浜甲子園」の運営を通して見えてきた地域とのかかわり方について、お話していきたいと思います。

(HITOTOWA INC. 青山めぐみ)

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人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決します。 街の活性化も、地域の共助も、心地よく学び合える人と人のつながりから。つくりたいのは、会いたい人がいて、寄りたい場所がある街。そのための企画と仕組みづくり、伴走支援をしています。

http://hitotowa.jp/

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