2020-12-02

#19 “走ってみたい”人に伴走する、拠点のありかた

こんにちは、HITOTOWAの青山です。

前回は兵庫県・西宮市のエリアマネジメント組織「まちのね浜甲子園」にあるコミュニティカフェ「OSAMPO BASE」の運営についてお伝えしました。

今回は、「まちのね浜甲子園」が運営するコミュニティスペース「HAMACO:LIVING」で起きた、ある住民さんとの印象的なエピソードをご紹介したいと思います。

「つながりは欲しいけれど、行けない」

住民のAさんと知り合ったのは、あるマンションで実施したウェルカムパーティでのことです。パーティ中、お子さんのお世話が大変そうだなと感じてお声がけしたとき、お子さんが自閉症だと話してくださったのがきっかけでした。

その後、Aさんと改めてお話する機会があり、これまでの経緯や悩みについて伺うことに。それまで育児について悩みを相談ができる相手が少なく、またお子さんの行動にハラハラするあまり外へも連れ出せず、孤独な育児をしていたことなどを打ち明けてくださいました。

「HAMACO:LIVING」も存在は知っていたものの、同様に足を運びづらかったとのこと。

それらのお話は、私たちにとっても大事な話でした。

コミュニティスペースを地域に開放してはいるものの、そもそも「誰でもどうぞ」と言われて立ち寄れる人は、他の居場所でも飛び込んでいける人たちなんじゃないか……? 事務局をしている私たちも、そういった矛盾が心のどこかで気にかかっていました。

もちろん、広く開放すること自体が悪いわけではありません。でもそれが地域のつながりを活性化する一方で、人知れず助けを必要としているマイノリティの方にとっては、助けにならないどころか、むしろ肩身の狭い思いをさせてしまうこともある。

これは「地域拠点のジレンマ」とも呼ぶべき課題です。

「地域拠点のジレンマ」を乗り越えるには?

まちに暮らす人を「つながりをどの程度求めているか」と「地域拠点があれば(心理的ハードルを乗り越えて)使うか」といった2軸で分けてみると、下図のようになります。

図で示した右上の網掛け部分、つまり「拠点があっても気がねなく使えない」けれど「つながりが重要(と自認している)」方は、どうすれば拠点を使ったり、困ったときに頼り合えるご近所さんと出会えるのでしょう。

この問いに対して地域拠点ができることは、「個別の声かけ」や、明確に「あなたが対象ですよ」とわかる形で何かしらの集まりを実施する、などです。

「個別の声かけ」の効果はあなどれません。「HAMACO:LIVING」も運営開始直後は、「前を通る人に逐一声をかけてみる」などの取り組みを行い、徐々にスペースに親しんでもらうように心がけてきました。

「子どもの居場所づくりをしたい」中野さんと、Aさんの出会い

そういった姿勢で運営をつづけていると、少しずつ、「参加者以上」の住民さんが現れはじめました。「HAMACO:LIVING」を通して、自身の興味・関心について主体的に取り組んでみたい、という方々が出てきたのです。

拠点を利用してくれていた住民さん、中野さんもそのひとりでした。

聞けば中野さん、かつては小学校の教員をされていたのだそう。

公立の小学校という場では、「個」に合わせた教育がどうしても制限されてしまうこと。生きづらさを抱えた子を見ていると、「ありのままで大丈夫」と思わせてくれる場所がもっと必要だと思うこと。そして自分自身も「子どもがその子らしくいられるような居場所づくりをしたい」と考えていること─。

そんな中野さんの思いを知った私たちは、先述のAさんに、コンタクトをとってみました。中野さんや居場所づくりの話をしてみると、Aさんも「まさに私が求めていたのはそんな場です!」と喜んでくださったのです。

そして私たちがサポートに入り、中野さん、Aさんを含めオンラインでお話する機会を設けることに。中野さんはAさんの悩みに積極的に耳を傾け、元教員の知識や経験を共有。その中でAさんも「ずいぶん気が楽になった」と涙しておられました。

この会は、中野さんのやる気スイッチをグッと押下したようです。その後、中野さんを中心に「育ての会 ありのままで」という小さな市民活動へ発展を遂げました。「まちのね浜甲子園」としても、会が持続的に運営できるようなサポートができればと考えています。

共助の灯火に薪をくべる

この事例を踏まえて、「拠点があっても気がねなく使えない」けれど「つながりが重要(と自認している)」方に向けて、拠点ができることはもうひとつある、と気づきました。

それは「誰かの力になりたい」「何かやってみたい」と社会課題を市民レベルで考える人を伴走支援することです。中野さんとAさんの例のように、その伴走支援が結果として、ゆるやかに「拠点のジレンマ」を解消する一助になるとわかったからです。

「まちのね浜甲子園」の設立以来、さまざまな変化がありましたが、特筆すべきなのは「住民の方のかかわり方の変化」です。

最初こそ「どんな人が近くに住んでいるのかな?」と興味本位でイベントに参加してくださった住民の方々。でも今では中野さんのように、自らのスキルを使ってまちの課題解決に貢献したり、「助け合える場や機会を作りたい」と声をあげてくれる方も増えてきました。

このような方々をまっとうに頼ること。そしてどうすればその方々のやりたいことを、負担感や経済性など含め、バランスする仕組みとして成立させられるのかを考えること。

拠点の運営者はそこに注力することが、まちの困りごとを解決するためにはもっとも必要なのかもしれません。

(HITOTOWA INC. 青山めぐみ)

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人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決します。 街の活性化も、地域の共助も、心地よく学び合える人と人のつながりから。つくりたいのは、会いたい人がいて、寄りたい場所がある街。そのための企画と仕組みづくり、伴走支援をしています。

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