2026-01-23

#38 住宅系エリアマネジメントの代表的存在「まちにわひばりが丘」を通じてネイバーフッドデザインやHITOTOWAの未来を考える【15周年記念レポート後編】

2025年12月24日に15周年を迎えたHITOTOWA。去る12月12日に開催した社員一同が集ったHITOTOWA15周年記念の勉強会を開きました。
学びの場では、今ひととわ不動産が伴走する「タネニハの森」の秋田さんと荒川さんに案内いただきながら、タネニハの今とこれからについてお話しいただきました。

その様子をお届けしている記事はこちらです。

後編では、これまでHITOTOWAが2020年まで関わってきた、西東京市/東久留米市にあるひばりが丘団地の活動の今と未来について考えていきます。
住民が主体となって活動をする一般社団法人まちにわひばりが丘の事務局長である若尾健太郎(わかお・けんたろう)さんをゲストにお迎えしました。

暮らす人誰もが主役。良き隣人関係を育む「まちにわ ひばりが丘」

会の前半では、東久留米市の守るべき農の風景、未来に向けた食・農・住のあり方について考える時間になりました。

荒はこの時間のことを「HITOTOWAの未来について考えるきっかけ」だと話しました。

2023年より新たにまちの風景を継承するひととわ不動産の事業が始まりましたが、一方でこれまで15年間基幹事業として取り組んできたのがネイバーフッドデザインです。

その象徴として今もなお存在しているのが、ネイバーフッドデザインの中で古くから取り組んできた、東久留米市/西東京市にあるひばりが丘団地のエリアマネジメント活動「まちにわひばりが丘(以下、まちにわ)」です。

2014年、ひばりが丘団地再生事業のために開発事業者とUR都市機構が中心となって立ち上げたのが「一般社団法人 まちにわ ひばりが丘」でした。そのときにHITOTOWAは事務局として一緒に活動していました。いずれ住民主体で営むことを視野にエリアマネジメントを展開し、2021年度からは若尾さんを中心に、住民主体の運営を行っています。

住民主体に移行して5年。進化するエリアマネジメント

2021年度にまちにわひばりが丘の運営が住民主体に切り替わってからもう5年になります。すっかり住民の方で運営していくことになじんでいるように見えますね。

若尾さん私自身は2019年度から本格的にまちにわに関わることになりました。現在役員は地域住民が主体となり、総会も各マンションの管理組合のみが行い、事務局に私がついています。

髙村若尾さんは地域の農の風景を継承するために、ご自身がコミュニティ畑などを運営していて、元々地域の方とのつながりがある。事務局長として適任だと感じていました。

若尾さんとはいえ土台があったからこそ、今自然な姿の運営ができてるんです。まちにわの土台を築いた髙村さんや田中さん、皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

髙村若尾さんが推進してくださっているからこそです。

若尾さんこの5年をふり返るとたくさんの出来事がありました。その中で最もセンセーショナルだったのは、これまでエリアマネジメントの会員外だった戸建住宅のエリアの方が、まちにわひばりが丘の正会員として参加してくださったことです。これほど嬉しいことはありませんでした。

これぞ、まちにわひばりが丘の進化とも言えるのではないでしょうか。

若尾さん2014年からエリアマネジメントが始まり10年過ぎた今、住まう人の年齢層も大きく変化してきました。子どもたちが成長し、大人は次第に高齢化している。だんだんこの地域の活動や自治会に関わる人たちのライフスタイルの変化や、年齢を重ねたことによって、かけられるエネルギーが減っているのです。

今回の進化は、支え合う人たちを増やすことにもなりますね。

10年先も、20年先も。持続的なまちにわであり続けるために

若尾さん現在の成熟したコミュニティの姿は喜ばしいことである一方、ちょっとした焦りも抱えています。

どんな点でしょうか。

若尾さんエリアが再開発されて10年も経つと引っ越しや移住、転勤などで住居を替える人が出てきます。途中から引っ越してきた人はなかなかまちにわの活動のことが浸透していない。知る機会がないからです。新たな住民の方々とともに、まちにわの活動を行なってくことが必要だと痛感しています。

そのためにひばりが丘団地の再生に関わってきたコスモスイニシアに伴走いただき、新たな取り組みが始まったそうですね。

若尾さんはい、「ひばりが丘connect(コネクト)」です。具体的には「ひばりが丘に住みたい」世帯の住み替えを促進していくことです。住民の入れ替わりが始まると、売買や賃貸をサポートする方々は多様になっていきます。開発時のように協力し合う人たちがが限定されていません。ゆえに私たちまちにわのことを知らないまま売買賃貸されて、入居している人が増えています。

(画像引用:ひばりが丘connect)

これまで培ってきたまちにわの活動の経緯を知らないために転入者にコミュニティのことが伝わらないのはもったいないことですよね。

若尾さんだんだんと関係性が希薄になる恐れがあることにはこういった点も一つあるのです。だからこそ、これまでの経緯を知っていて、背景を伝えることができるコスモスイニシアさんに住み継ぎのサポートをしていただいています。
実際に個人のまちにわの会員の方が年間 1%ずつ減ってきています。最近住民の方々から「せっかくここまで関係を培ってきたのに、新しく住み始めた方にまちにわのことが伝わっていないのは、機会損失じゃないのか」という声が上がりました。
この住民のつながりこそがこのまちで最も大切なことだよなと改めて認識しました。

3人の話からヒントを得て、さらに知識を深めていく

秋田さん・荒川さん・若尾さんのそれぞれの視点でまちに対する思い、課題、未来について話していただきました。その間、参加者の思考がぐんぐんと深まっていき、気づけば2時間半も経過。
HITOTOWAメンバーから続々と質問の声が上がっていました。

まずは若尾さんへ「ひばりが丘団地」に関する質問です。

団地にこれから求められることとして「循環」が一つテーマにありました。再開発によって分譲エリアの住民が入れ替わり10年経つと暮らす人は年齢を重ね、居住者は固定化していく。一方で賃貸エリアでは引っ越しがあり人々の循環はしていきます。その中で次の一手をどう打つのか

HITOTOWAメンバーは気になっているようです。

若尾さんは「この5年ほどで小学校のPTAを核としたコミュニティが急速な広がりを見せている。彼らの循環の力を借りない手はないと思っています。まちにわにもどんどん関わってもらうために、私たちの活動でに巻き込んでいくことが大事なのではないでしょうか」と話しました。

「エリアマネジメントは身内の集まりだけになってはならない」と若尾さんは考えています。住民が定着し、年齢を重ねていき、活動が減っていくと、活動が衰退化していく恐れがある中で、関わる人の門戸は広げていかなくてはならない。そのためにいつでも出入りできるオープンな場や機会を増やしておきたいそうです。

ただし「門戸を広げつつも、自分たちの活動の軸はブラさない。そのバランスが難しいなと思います。 というのも軸はありつつもそれにこだわりすぎると狭い世界になってしまうからです。これまでの伝統的な地域活動は軸を持ちすぎているが故に、世界が狭くなってしまい、結果的に活動がたちいかなくなってしまっている例もある」と指摘します。

「社会の情勢に応じて自分たちの立ち位置を変えていくことが大切」と実情を話してくれました。

エリアマネジメントには終わりがないーー持続可能性を追求する中で人の流れがあるところで活動をしていく必要があります。また、年を重ねて巣立つ人たちが、大人になった時にまた住みたいと思って戻ってきてもらうためにどういうことができるのかを考え続けなくてはならないことを実感できました。

秋田さん・荒川さんに対しても質問が寄せられていました。

例えばこんな質問です。

タネニハの森として地域にまちづくりに関わるメンバーとして、HITOTOWA/ひととわ不動産が地域に入り込み始めている姿をどう捉えているのか

秋田さんは「これは自然なことだと思う」と笑って答えてくれました。

「確かにお互いに東久留米を拠点に活動をしていますが、市内でも全然異なるエリアで活動をしていますよね。私たちは南町がベース、HITOTOWAさんは学園町がベース。

エリアは近いのだけど、実際に学園町のことは知らないことが多いと感じるんです」と秋田さんは話します。

「たしかに学園町は周辺の地域と比べて特殊な雰囲気を持っていますよね」と荒が言葉を重ねました。

だからこそ「HITOTOWAとタネニハの森が接点を持つことで相互理解が深まるのではという期待を持っている」と秋田さん・荒川さん、荒も感じているそうです。

また、「これまで何百年と農園が主体であった秋田一家が、タネニハの森へと変遷。そのなかでタネニハ不動産を立ち上げたゆえんについても気になる」メンバーがいたようです。。荒川さんは「これもまた自然の流れだった」と話します。

秋田さんは地主の立場として「土地を持つものとして、その先にペットとの共生、環境との共生をする賃貸住宅、商業施設の『kinone東久留米』や、コミュニティスペース・畑を持つ『ツクルメの家』などをつくりたいな、と計画していました。ただ一人では到底できないと思っていたんです。どういうふうに形を作っていこうか考えるけれど答えが見つからない。そんなタイミングで荒川さんと“一緒にやろう”という話になりました」と話してくれました。

同時に荒川さんは勤めていた不動産会社を退職し、独立しようと考えていたタイミング。ぴったりのタイミングだったのでしょう。

二人が話すのは「地主がまちを守る、まちを創造する、不動産を営むことは“そのまちを知る人だからこそできること”」だと話します。

確かに地主が皆不動産を上手に運用する力があるわけではない。けれど、荒川さんのように地域への強い愛情とつながりを持ち、そして実務経験のある方とのシナジーが生まれた時に、地域の土地はより魅力的な姿へと変化するのではないかと感じました。

取り組みに対する疑問、人との関わり方、今描いていること、これから進めていきたい施策についてなど。興味を持って質問をするということは、それだけメンバーにとって自分ごとであるから。今気になることを聞き、そして自分のなかでかみ砕き、自分の拠点の活動にも生かしてみる。明日から一歩踏み出せるようなヒントがたくさんありました。

同じまちで暮らすもの同士で。今ある風景と人のつながりを未来に残す

秋田さんや荒川さん、若尾さんの話によると、同じ東久留米でも、エリアが変わればお互いの接点が多くはないそう。そして今回互いの話に耳を傾ける中で分かったことは、実は見えているようで見えていない世界が広がっているということです。

そのために、お互いに手を取り合ってできることがあるのではないか、と再確認をした時間にもなりました。

この場に集った人たちの目指すことは共通しています。

それは「今暮らすこのまちの風景を、人々とのつながりを、未来に残すこと」です。

秋田さんや荒川さん、若尾さんたちの描く未来は誰もがこの土地の持つ風景や暮らしやすさを享受し、そして未来に受け継ぐつながりをつくることだと感じました。

それは私たちHITOTOWAがこれまで取り組んできたネイバーフッドデザインの精神、そしてひととわ不動産が成し遂げたいと描いていることにも通じるように思います。

今日の時間はこれからを考える一歩。次の10年、15年に向けて私たちの歩みはこれから変化していくでしょう。

(HITOTOWA INC.代表取締役 荒 昌史/取材・執筆・編集 永見 薫/撮影 千葉愛子・一般社団法人まちにわ ひばりが丘)

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HITOTOWA

人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決します。 街の活性化も、地域の共助も、心地よく学び合える人と人のつながりから。つくりたいのは、会いたい人がいて、寄りたい場所がある街。そのための企画と仕組みづくり、伴走支援をしています。

http://hitotowa.jp/

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