2019-10-31
冷静さと情熱を持って、今日も私たちは人と向き合う。HITOTOWAの文化と働き方とは
interviewee:髙村和明 寺田佳織 田中宏明
2019-10-31
interviewee:髙村和明 寺田佳織 田中宏明
「ともに助け合える街をつくる」をビジョンに掲げ、企業や市民とともに、都市の社会環境問題の解決に取り組んでいるHITOTOWA。前回までのインタビューでは事業についてご紹介しました。
こうした事業に取り組むHITOTOWAのメンバーたちは、どのような想いで、どのように働いているのでしょうか。今回の社員インタビュー第二弾では、メンバーの価値観や組織の特徴、働き方について、髙村和明、寺田佳織、田中宏明の3人に話を聞きました。
髙村:僕は「まちにわひばりが丘」という、西東京市・東久留米市にまたがるひばりが丘団地再生エリアのネイバーフッドデザインのプロジェクトを、2015年4月の立ち上げ当初から担当しています。デベロッパーや住民の方々とともに、普段は楽しく、困ったときには助け合えるように街づくりを目指し、エリアに常駐ながら運営メンバーのチームビルディングやメディア運営、コミュニティスペースの施設管理、コミュニティビジネス創造を行っています。
寺田:私は現在は主に、多摩エリアのネイバーフッドデザインを担当しています。すでに高齢化率が50%を超えている団地もあるなかで、エレベーターがない棟も多いなど、お年寄りの生活に関わる課題を多く抱えた地域です。そんな団地にある商店街の一角の空き店舗にコミュニティ拠点をつくり、地域の方々の居場所づくりのお手伝いをしています。
田中:僕は以前は、まちにわひばりが丘のプロジェクトを髙村さんと一緒にやっていたのですが、今は2020年2月に入居開始予定の賃貸マンション「フロール元住吉」のネイバーフッドデザインの準備に取り組んでいます。来年3月からこのマンションに常駐しながら、1階部分に設ける入居者用のシェアラウンジと、地域の方々にも開いたオープンスペースを運営し、入居者同士がゆるやかに繋がるコミュニティと地域交流の空間の創造に取り組んでいく予定です。
高村:僕が一番HITOTOWA歴が長くて、2014年9月に入社しました。もともと大学1年の頃から、HITOTOWAの代表である荒が立ち上げたNPO法人GoodDayに関わっていました。その後、新卒で入った建設会社でマンションのモデルルームをつくる仕事をしていたのですが、ある年のお正月に、荒から「ちょっと会えないかな」って連絡が来て、「ひばりが丘で面白いプロジェクトがあるから、一緒にやらない?」と声をかけられたんです。
僕はもともと環境問題に興味があったのですが、その時に荒から「これからさらに都市部の高齢化やコミュニティの衰退が大きな課題になってくる。コミュニティがないと自然共生型の暮らしもできない。HITOTOWAはGoodDayでの経験も活かしながら、都市の社会環境課題に取り組んでいきたいんだ」と言われ、すごく共感して入社を決意しました。
寺田:私は大学と大学院で、建築や空間がコミュニティ形成に与える可能性について研究していました。大学院を卒業後、現場を知るためにマンション管理会社に就職し、分譲マンションにおける修繕工事の現場管理などを担当したあと、HITOTOWAに転職しました。
ジョインしたのは、私も髙村さんと同じで、HITOTOWAのコンセプトや荒の想いに共感したことが大きいですね。私は転職活動の際、都市の集合住宅での豊かな暮らしを創るために、より多角的に居住者と関わることができる仕事をしたいと考えていました。そんなときに、「社会環境課題を解決する専門家集団です」と打ち出されたHITOTOWAの求人記事と出会い、「ここでなら私のやりたいことが実現できるのでは!」と思ったんです。
田中:僕は大学生時代、コミュニティデザインに取り組むstudio-Lという会社のインターンとして、地方自治体におけるまちづくりプロジェクトに関わっていました。また大学の研究で東日本大震災の被災地などの地方の現状に数多く触れたあと、東京に戻ってくるタイミングで、HITOTOWAでインターンをしていた友人に荒を紹介されて。「地方だけじゃなく、都市にも課題はある。そういった課題を解決するために、ネイバーフッドデザインに取り組んでいるんだ」という話を聞いて、「自分のやりたいことは、都市の社会環境課題の解決なんじゃないかな」と思い、HITOTOWAでインターンを始めました。
大学を卒業してからは、一旦フリーランスとしてHITOTOWAを含め複数の会社に関わっていました。複数のプロジェクトを関わることで、成長できると思っていたんです。でも、フリーランスとして働くなかで、やはりもっとひとつのプロジェクトに深く関わっていきたいという思いが強くなり、それが実現できるHITOTOWAに入社することにしました。
髙村:先ほど寺田も言ったように、「社会環境課題を解決する専門家集団」だと思っています。言いかえれば、「萬屋(よろづや)」的集団。たとえば僕はDIYができたり、他のメンバーはワークショップができたり、リサーチが得意だったり、人とのコミュニケーションが得意だったり。メンバー一人ひとり、違った専門性を持っているので、それらを組み合わせてどんな相談にも柔軟に対応することができるんです。
寺田:みんな現場を大切にしている、という印象もありますね。コンサルティング会社には、あまり現場に足を運ばない方もいるかもしれませんが、HITOTOWAのメンバーは毎日のように現場に行き、住民の方の声を聞いています。現場に行くことで、どんなニーズがあるのかを把握し、最適な提案をすることができるんです。
田中:現場が大事というのは、すごくわかります。まちづくりやコミュニティデザインについての理論はもちろん理解した上で、理論を実践に落とし込んでいくには、足を使って情報を取っていかないといけないんですよね。
寺田:好きですね。私たちが幸せにしたい人は現場にいるのに、足を運ばないとそうした方々に会えないじゃないですか。
髙村:現場にいると、思いがけないタイミングでちょっとした変化に遭遇することがある。「あのおばあさんがこんなこと言ってくれた」とか、「あのおじさんが楽しそうにすごしていた」とか。そういう声や姿に出会えることが、僕らにとってのご褒美なんです。
HITOTOWAのネイバーフッドデザインには、常にひとつのエリアにいる「拠点常駐型」と、さまざまなエリアを行き来する「地域回遊型」がありますが、僕のような「拠点常駐型」はそうした現場での喜びは感じやすいと思います。「地域回遊型」はどうなんだろう?
田中:たしかに、現場での喜びという意味では「拠点常駐型」の方が感じやすいかもしれません。一方で「地域回遊型」も、新たな街のことを次々に知れるのは面白いですよ。新しい関係性を育んでいったり、足を運んだことのなかったエリアを開拓していく喜びはあると思います。
寺田:そうですね。私であれば集合住宅における暮らしというテーマがあるように、メンバーそれぞれが自らのテーマを探求し、それを他のメンバーもサポートする文化はあります。ともに学び合うという意味では、HITOTOWAって大学のゼミみたいな雰囲気があると思いますね。「先輩、ちょっと論文の方針まとめたのでアドバイスください」みたいな感覚で、自分の今探求しているテーマについて他のメンバーに聞くことも少なくありません。
髙村:ゼミみたいだというのは、僕もわかります。それぞれのメンバーが日々考えたことについてみんなで議論したり、アドバイスをする風景が日常的にありますね。たとえば、ここ1年くらい、「ともに助け合える街ってどんな街?」というテーマで議論を続けています。当初は、メンバーそれぞれが異なる「ともに助け合える街」のイメージを持っていたんですが、だんだん議論を重ねる中で、共通のイメージを持つことができるようになってきています。基本的に社員同士はリモートワークでオンラインでのコミュニケーションが多いからこそ、そういった対話の時間はすごく大切にしていますね。
さらにHITOTOWAは、組織にありがちな上下関係のしがらみがなく、他のメンバーに対してリスペクトがある点も特徴のひとつです。それぞれの専門性を尊重し合いながら、一緒に目標に向かって進んでいくチームなんだと思います。
寺田:社会や地域に貢献したいという想いも、もちろんあります。でも、根本にあるのは目の前の「人」に対する想いです。特に、ネイバーフッドデザインに取り組んでいる私のようなメンバーは、いかに身近にいる誰かの困りごとを自分ごととして考えて実践できる方を街に増やしていくかがミッションなんです。だから、それが達成できたと実感できる光景に触れたときは、大きな喜びを感じますね。
高村:こないだ、HITOTOWAの社内イベントとして「ネイバーフッド写真展」という企画をやったんです。僕たちのプロジェクトを通じて共助が生まれたことがわかるシーンを、写真とエピソードでメンバーが紹介するというものです。その写真展のためにそれぞれのメンバーが選んだ写真をみても、本当にみんな「人」がモチベーションなんだなぁ、と思いましたね。
髙村:例えば、ある韓国人の家族と日本人の家族の写真がありました。タワーマンションのコミュニティで企画したツアーで、ご家族同士が仲良くなり、ツアーの最後に立ち寄った道の駅で韓国人のご家族が「今度韓国料理をご馳走するから、ぜひ家に遊びに来てください」と誘っていたそうです。そのエピソードが共有されると、メンバーみんな「おお~!!」と声をあげていましたね。
田中:あの話はすごく良かったですね。家で一緒に食事をするくらい仲が良くなったら、なにか困ったときに「大丈夫?」って言い合えるはず。そういった共助の関係性ができたことが、エピソードから伝わってきました。
コミュニティイベントの様子。こうした写真とその背景にあるエピソードが、ネイバーフッド写真展では各メンバーから紹介された。
寺田:私はある男性の写真を提示しました。私が担当しているエリアで、二つ目の自治会館をつくることになり、そのための話し合いの場を設けたときのものです。地域にもともとあった自治会館の管理担当を10年間続けていた男性がいて。その方は、毎月1度、朝8時から自治会館で翌月の会館予約の受付をする仕事を、10年間にやってきたそうで、「担当をやめたい。自治会館をひとつ管理するのも大変なのに、ふたつなんて本当にできるのか。少なくとも自分は関わらない」とおっしゃっていました。
なので、ふたつめの自治会館の運営については有志で若い世代を巻き込んで話し合うことにしたんです。そしたら、その男性も気にしてくださっていたんでしょうね。最初は会議の輪に入らず、腕を組んで外から眺めていて。でも会議の回数を重ねていくうちに、「サークル活動の受付は、インターネット受付にして無人化しようよ」といったアイデアも出てきて、「あれ? これまでにみたいに大変な仕事はしなくていいのかもしれない」と気づきを始めたのか、だんだん会議の輪の中に入るようになって。最初は「自治会館の管理担当をやめて、ようやく肩の荷が下りた」とおっしゃってたのが、結局新しい組織に入っていた……というエピソードがありました。まさに、住民の方自身がコミュニティのことを自分ごととして考えて実践していく可能性を感じ、とても嬉しかったエピソードです。
寺田がネイバーフッド写真展で提示した写真。
寺田:その写真展全体を通して印象的だったのが、どのエピソードも、最初からそういう関係性が生まれることを私たちが意図していたものではない、ということ。つまり、私たちHITOTOWAのメンバーが直接的に関わっていないときに、副産物的に生まれた関係性に、たまたま気がついたエピソードばかりなんです。HITOTOWAのメンバーはみんな、そういった思いがけない共助のつながりが生まれることに喜びを感じているのだなぁと、あらためて思いましたね。
寺田:自分で時間や働く場所をコントロールできるので、私はすごく働きやすいです。社内のミーティングであればオンラインを活用して自宅でもできますし、時間の管理も個人に任されているので、業務の合間に私用を済ませたり、休憩を取ることも可能です。ただ、土日にも現場に足を運んだり、地域の催しに参加したりすることもあるので、仕事とプライベートが明確に分かれているわけではないですね。
髙村:以前、田中が「ワークライフカオス」って言っていましたね(笑)。ワークとライフのバランスを取るというよりも、混ざり合っている。それは必ずしも悪いことではなく、混ざり合っているからこそ見えてくるものがあると。
田中:そう思います。なにがプロジェクトのヒントになるか分からないので、僕はとりあえず担当する地域に関係する催しには足を運んでみるようにしています。そうすると、別の日に地域の方と話していても、「この前あのイベントに行ったんですよ」という話ができて、それをきっかけに仲良くなり、思わぬ話を聞けることもあるんです。あまりにも「ワークライフカオス」になりすぎてストレスが溜まってしまうことがないようにうまくコントロールできる方であれば、いい働き方なのかなと思いますね。
髙村:一方で、僕はメンバーをマネジメントする立場としてコメントさせていただければ、みんなさまざまなライフステージを経験するので、それを組織としてどう支えるかは今後もっと考えていきたいと思っています。例えば僕も育休を取得して、そういった働き方もできるのだということを背中で示しているつもりです。
ただ、僕も田中と同じで休日に仕事をすることも多く、土曜は子どもを保育園に預けているんですが、日曜と祝日はどうしても子どもを預けることができない。とはいえ日曜に出勤しなきゃいけないことも結構あって、パートナーに負担をかけてしまっているのは悩ましいところですね。
田中:その意味では、HITOTOWAは最近チーム制になり、ひとつのプロジェクトをマネージャーと何人かのメンバーで担当する体制になったので、それぞれのメンバーの仕事量やライフスタイルも確認し、助けあいながら進めることができるようになったのはありがたいですね。仕事内容や、ライフイベントと仕事とのバランスで悩んだときにすぐ相談できますし、そのぶん自分がやりたいことに集中できています。
寺田:会社の成長とともに、個人が成長していくことができるチームだし、これからもそうあり続けたいですね。言いかえれば、ひとりのメンバーの専門性や力を、チームとしてどう伸ばしていけるか、という議論ができる組織。そのメンバーの成長のためであれば、ゆくゆくはその方が会社を出ていくことも応援できるような関係性だといいですね。
髙村:僕も、集団なんだけど個が強いのがHITOTOWAというチームなのかなと思います。
ミッションに共感して働いているという点ではチームだし、家族のような存在。ただ、組織が個人のやりたいことや成長を妨げるものになるのではなく、個人がやりたいことをやり、成長することが組織のためにもなる。そんな状態を目指していきたいです。
田中:2人の意見にとても共感しています。あえて違う点をあげると、HITOTOWAは冷静さと情熱を併せ持ったメンバーが集まるチームだと思っています。メンバーの誰もが、日頃から淡々と現場に向き合っている。でもその冷静さの根底にあるのは、やっぱり情熱だと思うんです。目指したい社会、目指したい街を実現しようとする熱い想いを誰もが持っていて、そのイメージを実現するために冷静に現場と向き合っている。その冷静さと情熱の絶妙なバランスが、僕にはとても居心地がいいんです。
冷静さと、情熱。理論と、実践。個人と、組織。そして今回の取材では話に上がりませんでしたが、社会性と、経済性。一般的には対立するそれらの要素を、バランスよく併せ持っているのが、HITOTOWAという会社の大きな特徴です。
そんなHITOTOWAの組織の特徴や働き方は、メンバーの言葉にもあるように、日々アップデートが続けられています。これからHITOTOWAで、どのような新しい生き方・働き方が生まれてくるのか。事業だけでなく、組織づくりという点での私たちの挑戦も、ぜひご期待ください。
HITOTOWAの声