2020-03-23

#7 災害時におけるマンション特有の不安に寄り添う

2018年の台風21号とマンション

HITOTOWAの宮本です。東日本大震災から今年で9年が経ちました。皆さんは、あのとき何を感じ、誰を思っていましたか?

私は当時、防災を専門に学ぶ学校に通っていた経験から、震災の四十九日に被災地を訪れました。ちょうどその日、合同供養が行われていました。

被災された方々に現地で話を伺うなかで、「津波がきたときの失望感」や「終わりが見えない避難所生活の大変さ」など、リアルな声に深く心を動かされたのを覚えています。そして私は自宅に戻ってから、家族や学校、地域の人たちにその話を語り継ぎました。被災地で生きている人を想い、少しでも寄り添ってほしいと思ったからです。

被災された方の声に寄り添うというと、2018年9月に関西を襲った台風21号のときも同じでした。

現在、私は兵庫県西宮市の浜甲子園団地再生事業区域におけるエリアマネジメント団体、『まちのね浜甲子園』で事務局を務めています。そこで台風21号の後、エリア住民を対象に台風被害についてのアンケートを実施したのです。

その中では「情報収集に必要なスマホの充電ができなくて困った」「断水でトイレができず困った」など各家庭の備えに対する声があった一方で、

・立体駐車場から車が出せず避難ができない
・エントランスの扉が空きっぱなしで不安だった
・防災倉庫の開け方や備蓄品の使い方がわからなかった

といったマンション特有の声も多数ありました。発災によって停電や断水が起こると、多くのマンション住民が孤独なマンション内避難生活を余儀なくされてしまいます。

各家庭での防災対策も重要視されてきていますが、今回のアンケートで「マンション特有の困りごと」について数々の声が届いたことで、マンション全体での備えも大切だと改めて気づきました。

暮らしをつくるのは私たち

一般的なデベロッパーはマンションを建設・販売し終えると、管理会社や管理組合に運営を任せます。つまり住民が暮らしはじめてから、そこにデベロッパーの姿はないのがこれまでの“普通”でした。

たしかに建物として「地震に強いマンションに住む」だけでも魅力的だとは思います。でも、一歩その先を想像してみてください。

「もし災害が起きたら、近くに助けてくれる人はいるだろうか」

そのとき、マンションについて一番理解しているはずのデベロッパーは“近く”にいないのです。実際に助け合っていくのは家族だったり、同じ階や近くに住んでいる人だったりします

「強い建物をつくるデベロッパー」と、「各家庭での備えを意識する住民」。これまではそれぞれが別々に防災対策をしていて、連携がありませんでした

そのため、せっかくハード面での備えが充実していても、「災害時にマンションの防災備品や設備を有効的に使えていない」、また「助け合える住民の関係づくりができていない」などの問題が起きてきたといえます。

本当の防災は、ひとりではできない

つい最近、私は実家を出て独立しました。

新居を探すにあたり、間取りや内装、利便性などに併せて、主に市区町村が発行しているハザードマップも確認しました。防災に携わっている立場として、「できるかぎり安全な場所に」という気持ちがあったからです。

入居前や入居直後は、やはり立地や建物、設備といったハード面での安全性を気にしがちですよね。しかし生活に慣れるにつれ、近隣住民との関係性や周辺の防災活動といったソフト面の“安心”についても考えだすと思います。

本当に安心して暮らしつづけていくためには、どうしても自分や家族だけでは限界があります。ともに暮らしていくマンション住民や、生活を支えてくれる管理会社との関係も、とても大事。災害時のアンケートで寄せられる声や、『まちのね浜甲子園』における住民同士のつながりを見ていて、そう感じています。

よりよい防災減災を実現するためにはどうしたらよいのか……。そう考えつづけて行きついたのが、防災減災は「デベロッパー」「管理会社」「住民」の三位一体で行うことが大事!という結論でした。

近年は全国で大規模災害が頻発し、防災について高い関心を持つ方が増えています。デベロッパー側にとっても、「三位一体の防災対策」は販売時における大きな強みになるはずです。

では「三位一体の防災対策」とは具体的にどういうことか? また、どうすれば実現できるのか。詳しくはまた次回、お届けしましょう。

(宮本 好)

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人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決します。 街の活性化も、地域の共助も、心地よく学び合える人と人のつながりから。つくりたいのは、会いたい人がいて、寄りたい場所がある街。そのための企画と仕組みづくり、伴走支援をしています。

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