2021-04-08

#21まちでの「役割」が地縁づくりを加速する。そして、住民たちが自ら歩み続けるまちへ

こんにちは、HITOTOWAの髙村です。

前回は、西東京市・東久留米市にまたがるひばりが丘のエリアマネジメント組織「まちにわ ひばりが丘」5年間の常駐経験から、「一人と一人の小さな対話を積み重ねる」大切さについてお話しました。

今回ご紹介したいのは、ひばりが丘に住む70代の男性、Aさんのエピソード。

対話の積み重ねには、時間がかかる。だからエリアマネジメントの成果は、数年ごしに「じわじわ」出てくるという話をしましたが、じわじわと変化があるのは、餅つき大会などイベント運営に限った話ではありません。

むしろ日常おける何気ない「会話の積み重ね」こそ、じわじわと効果があらわれてくるもの……。そしてその先に、本人も予想していなかったような変化があらわれることも、あります。

それは、どういうことか。

さっそく、Aさんの話をご紹介しましょう。

遠巻きに見ていた70代の住民さんが、共同菜園のリーダーに

ひばりが丘のコミュニティセンター「ひばりテラス118」では、庭で近隣住民による共同菜園の運営も行っています。

ある日、いつものように庭で菜園活動を行っていると、それを遠巻きに見ているご年配の男性が……。それがAさんでした。

「何やってるの?」と聞かれたので、共同菜園の活動を説明。でもそのときは、「ふーん、そうなんだ」くらいの反応だったんです。

その後、拠点をふらりと訪れてくれたときに挨拶程度は交わす仲に。そんなあるとき雑談をしていると、実はAさん、以前は植木を切る仕事をしていたのだとわかりました。

こういった背景があり、ひばりテラスで植木が伸びてしまったときにお手入れの手伝いをお願いしたら「いいよ」と快諾してくださって。少しずつ、Aさんとまちの活動とのかかわりが増えていったのです。

その後も「共同菜園を一緒にやりませんか」と声かけを続けていると、いつのまにか、「俺が堆肥つくってやるよ!」と自ら菜園活動に加わってくれるように。

今ではAさんが菜園の講師・兼リーダーとなり、若い方や子どもたち、5世帯10人くらいで共同菜園活動をしています。

まちの中に「役割」が見つかると、動き出す

このAさんのエピソードで思うことは、まちの中での「役割」ができることで、まちの人々との関係性が加速的に育まれていく、ということです。

いきなりプレーヤーになる人は、なかなかいません。でも自分にとってよいかかわり方が見つかると、手伝ってくれたり、主体的に活躍したりするようになる。菜園仲間に囲まれ、本当に楽しそうに汗を流すAさんを見ていると、そんなことを思います。

まちの中の「役割」を見つけるという意味では、既存のお祭りの手伝いや、地域の清掃活動、共同住宅での防災訓練などもそう。

地道な活動によってじわじわと育まれたつながりの芽が、「役割」によって加速し、花開いてゆく。そんな光景を、何度も目の当たりにしてきました。

「困ったとき自然と助け合えるまち」が、実現しつつある

そういったエピソードは、ここに書ききれないほどたくさんあります。

結局、この5年間で私たちが行ってきたことは、そうやってじわじわとまちがよりよくなっていくような、住民の方ひとりひとりの、横のつながりづくりのお手伝いだったのではないかと思います。

直接的に、大きな「地域課題の解決」はしていないかもしれません。でもそういった地域課題に対して、自然と助け合って立ち向かえるような横のつながりを、作ってこられたのではないでしょうか。

ひばりが丘団地周辺では、冬にはよく雪が降ります。

以前、マンションの管理人さんが業務外にもかかわらず頑張って雪かきをしてくれた……という話があったとき、住民間で「じゃあ今度雪が降ったら皆で声かけあって雪かきしようよ」という話になったのだそう。実際、その次の積雪のときに「集まれる人で雪かきやりましょう!」と声をかけたら結構集まり、皆で雪かきをしたと聞きました。

こういったエピソードも、年々耳にすることが増えてきました。困ったときに、自然と助け合える関係性。その一端は、確かに築くお手伝いができたのではないかと自負しています。

しかしエリアマネジメントを行う僕らは、あくまで黒子。「主役はまちのひと」を常に頭の片隅におき、行動していくことが大事です。

雪かきのエピソードのように、今、まちの方々にそういう関係性が育まれているのを見ると、少しはうまく立ち回ることができたのではないか、と感じています。

終わりに──これからも自分たちの足で歩み続ける、ひばりが丘

2020年6月。まちにわ ひばりが丘は、役員、そしてHITOTOWAとして私が担っていた事務局長を引き継ぎ、地域メンバー中心の組織体制に移行しました。

私もノウハウの提供と後方支援のため、個人として監事の役をいただき、陰ながら地域を見守り続けています。

運営が地域メンバーに移行して初年度であった2020年度は、コロナ禍という未知の状況下で、想い描いていたことがなかなかできない1年でした。

春の緊急事態宣言下では、やむなく「ひばりテラス118」を臨時休館に。また宣言の解除後も、施設の利用制限や営業時間の短縮、イベントの自粛・規模縮小など、リアルでの取り組みは思うようにできていません。ひばりが丘のために何ができるのか? 自問自答する日々が続いています。

そんな中でも、自分たちのできることを、一歩ずつ着実に進めていく姿がひばりが丘にはあります

たとえばオンラインを活用したイベントや、「STAY HOME」応援のキッチンカー誘致。さらには、感染症対策を徹底した小規模マルシェイベントの2ヵ月連続開催や、アフタースクールと連携したステンドグラス手作りイベント、居住者中心のリレーマラソン大会の企画(感染症の再拡大のため延期)などなど……、アイデアと熱意はとどまるところを知りません。

何かできることはないか?
困っている人はいないか?
どうしたらもっとまちで楽しく暮らせるか?

そんな言葉が、いろいろなところから聞こえてきます。

自分たちが住む「まち」を意識する。そこから生まれるこれらの思いが、きっとこれからもひばりが丘を支えていってくれると感じています。

これこそが、5年間を通じて生まれた成果なのかもしれません。

そんなこんなで、やっぱり「ひばりが丘団地」が大好きだなぁと思うこの頃です。

(HITOTOWA INC. 髙村和明)
記事内写真提供:まちにわひばりが丘

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人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決します。 街の活性化も、地域の共助も、心地よく学び合える人と人のつながりから。つくりたいのは、会いたい人がいて、寄りたい場所がある街。そのための企画と仕組みづくり、伴走支援をしています。

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