2021-07-15

#23 スポーツが広げる、社会課題解決の輪

社会課題解決の「壁」って?

こんにちは。2回目のページも開いていただき、ありがとうございます。HITOTOWAの津村です。

前回は「防災に対してスポーツが果たせる役割」として、「サッカー防災®ディフェンス・アクション」の様子をご紹介しつつ、防災に対する私の思いを書きました。今回は防災のみならず、広く社会課題解決に向けたスポーツの取り組みをご紹介しながら、みなさんと一緒に社会やまちの未来を考えていきたいと思います。

はじめに、「社会課題解決」という言葉を聞くと、どんな印象を持つでしょうか?

「社会をよくするために大事なこと」と考え、すでに何らかのアクションをされている方もいるかもしれません。一方で、なんとなく大切だという認識はあるものの「取り組み方がわからない」「とっつきづらい」という方もたくさんいるのではないかと思います。

実際、各種の調査でもそういった声がみられます。2017年に行われた「生活者の社会意識調査[博報堂研究開発局]」によると、何か社会のために役に立ちたいと思っている人が約8割もいる一方で、実際に社会貢献活動をしている人は約5割にとどまりました。この数字は「過去に社会貢献活動をしたことがある」人も含むため、日常的に行なっている人はさらに少ないと考えられます。


(出典:2017年 生活者の社会意識調査[博報堂研究開発局])

「大事だと思うけれど、なかなか取り組むきっかけがなくて……」。そんな人が大勢いることがわかります。またHITOTOWAが行なっている「防災」活動においても、「大事だけどなかなか取り組めない」と同様の状況があることは、前回お話しした通りです。

このように、取り組む「きっかけ」がない状況は、あらゆる社会課題解決の「壁」といえるのではないでしょうか。

Jリーグが展開する、ソーシャルグッドな取り組み

そんな現状に対して、Jリーグは2018年から「Jリーグをつかおう、社会のために」をコンセプトに、各地の社会・地域課題を解決する社会連携活動(通称:シャレン!活動)の推進を57のJリーグクラブと一緒に行なっています。

HITOTOWAは、シャレン!活動事務局のコアメンバーとして、各クラブが地域課題の解決力を上げるための学び講座「シャレン!キャンパス」の運営や、活動企画の伴走サポートを行なっています。ここでは、Jリーグ・各クラブが社会課題解決の「壁」をどのように乗り越えているのか、数々の取り組みの中から実例を2つほどご紹介しましょう。

━​━試合観戦時のCO2削減を実践 ヴァンフォーレ甲府エコスタジアムプロジェクト
ヴァンフォーレ甲府では、2004年からホームゲーム全試合で、紙コップの使用を廃止し、リユースカップ・リユース食器を導入。また分別回収のためのエコステーション(以下写真)も設置して、ゴミの削減、CO2削減に取り組んでいます。

クラブと協働することで、「環境問題に関心はあるんだけど、何からやればいいのか」という人たちも、スタジアム来場時には自然と環境負荷軽減に参加できる。そんな機会を、すでに20年近くにわたって提供しつづけています。

(エコステーションの様子 ヴァンフォーレ甲府HPより)

━​━大阪市の子どもたちの未来を一緒に作る セレッソ大阪読書推進プロジェクト
セレッソ大阪は、スタジアム以外での活動にも積極的です。大阪では子どもたちの読書離れに地域としても課題感があったため、本を身近に感じてもらおうと、大阪市立図書館・堺市教育委員会と協働で「読書推進プロジェクト」を展開。大阪市・堺市の全小学生にセレッソ大阪のマスコットや選手の写真を使った読書手帳を配布して、図書館への来館と読書率の向上を促しています。

そしてこの取り組みには、「大阪の子どもたちの、本への関心を高める」という社会からの期待に応えるために、地域の企業も参画。「地域の役に立つことを何かやりたい」という企業はたくさん存在しますが、単独で行なうのはなかなか難しいのも事実です。セレッソ大阪は、プロジェクトの門戸を地域企業にも開くことで、社会課題解決の「壁」を一緒に乗り越えているといえるでしょう。

(読書推進プロジェクトの告知ポスター セレッソ大阪HPより)

「壁」を乗り越える、スポーツの力

「社会課題」と聞くと、「あ、まじめな話だ」と身構えてしまう。そういう部分は多かれ少なかれ、多くの人にあるのではないでしょうか。

私も以前は、社会課題に対して安易に近づけないと思っていました。社会課題の解決は、専門家や評論家のような人々が取り組むものだと、距離を感じていたのです。

一方で、スポーツには学生のころから親しみを感じていました。応援しているチームや選手が勝てば嬉しいし、負ければ悲しく、悔しい気持ちになります。そんなふうにスポーツには、喜怒哀楽がある。人の気持ちを動かす力があるんです。

社会課題には無機質なイメージを持っていましたが、そこにスポーツが加わると、社会課題に温度感が生まれ、色づくような気がする。そう気づいたのは、HITOTOWAに入ってソーシャルフットボール事業にかかわるようになってからでした。

人の心を動かすスポーツの要素が社会課題解決のアクションと結びつくことで、遠くに感じていた「社会課題」が身近になる。自分自身がその効果を実感し、スポーツが好きな自分だからこそできることはないか?と考えるようになっていったのです。

HITOTOWAにとって、スポーツは社会環境課題を解決するのに欠かせない、ひとつの大切な要素です。

「スポーツやスポーツ組織は、地域のためにどんな存在であるべきか?」

その問いの答えを、日々考えつづけています。現時点での私なりの答えは、「スポーツは、社会課題解決の新しいアプローチや参加方法を生み出すハブになる」

上でご紹介してきたようなクラブの取り組みもまさにそうです。自分にとって遠くに感じていた問題も、クラブを通して触れることで「自分ごと」化する。その取り組みの中で偶然出会った人と新しいつながりが生まれ、新しいネットワークができていく……。

社会課題は一部の人だけが取り組めばいいものではないし、一部の取り組みだけで解決できるものでもありません。

だからこそ、スポーツやJクラブなどの組織が得意なこと・できることを生かして、課題解決に取り組む仲間を増やす存在になっていけたらと思っています。そのために、HITOTOWAのソーシャルフットボール事業としても力を尽くしていきたいです。

(HITOTOWA INC. 津村翔士)

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※セレッソ大阪の公式Twitterで本稿をご紹介いただきました※

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人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決します。 街の活性化も、地域の共助も、心地よく学び合える人と人のつながりから。つくりたいのは、会いたい人がいて、寄りたい場所がある街。そのための企画と仕組みづくり、伴走支援をしています。

http://hitotowa.jp/

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