2022-08-01
2022-08-01
HITOTOWAの荒です。早いもので、4月下旬に書籍『ネイバーフッドデザイン』を出版してから3か月が経ちました。
この間、非常に多くの反響をいただきました。デベロッパー、管理会社はもちろん、自治会や管理組合、福祉関係、大学など教育機関の方々まで、想像以上に幅広くの方々からご関心をお寄せいただき、とても嬉しく思っています。
関連イベントも、自社で企画した2つのオンラインイベントに加え、各所よりお招きいただき、すでに20を超える場で読書会や勉強会を実施。参加された皆さんと熱のこもった意見交換を行ってきました。さらに私やHITOTOWA社員が参加せずに、独自に開催してくださった方々も多くいるようで、大変光栄に思っています。
個人的にも非常に密度濃く、多くの学びをいただいた3か月。この機にいただいたお声や学びを少しでもシェアできればと思い、筆をとりました。
書籍にはいろいろなご感想をいただいていますが、なかでも多くいただくのは「実践者だからこそ書ける本」という言葉です。
まちづくりの現場で実践に携わる方々からはシンプルに、「都市におけるコミュニティの意味が理解できた」「マンションの管理組合でコミュニティづくりをしようとしてうまくいかなかったが、その背景となる構造が理解できた」、また「それをどう突破したらいいかヒントが得られた」などの声を多くいただいています。
私たちが数々の実践を通して、横断的に地縁組織と関わり、それぞれの立場や認識の相違に触れてきたからこそお話できるものなので、お役に立ててよかったなと感じました。
また、「都市の未来的なつながり方が書かれた本」など、「つながりの新しい形」に着目いただいた方も多くいらっしゃいました。
0か100か、しがらみか孤独かの2択ではなく、個々人がつながりの「濃度」を選べるという考え方は、現代にフィットすると感じた方も多かったようです。“集団”ではなく、「個々人にどう向き合うか」をもとに書かれている……といったご感想もいただき、ああ、よく読んでいただいているなと嬉しく思いました。
さらにデベロッパーの方との読書会では、「エリアマネジメントという言葉がひとり歩きするなか、結局何を大事にしていけばいいのかわからなくて悩んでいた」というリアルな声も。その後読書会での意見交換も経て、「しっかり『未来とゴール』を描くことからやろう、再開発エリアだけじゃなく、もう少し広域の“まち”のあるべき姿のために考えよう、と考え方が転換できた」との感想をいただきました。
総じて皆さまから「HITOTOWAが丁寧に考えて取り組んでいることがよくわかった」と評価いただいたことは、自信につながりました。「つながりづくり」というとどこか “流行り”のように聞こえるかもしれませんが、長期視点で、地道にこつこつ、細部まで配慮しながら取り組んでいることを、書籍全体から感じとっていただけたのかもしれません。
ただ、「こんな丁寧な取り組みができるHITOTOWAの社員はすごいね」と評価いただくことは、ものすごく嬉しい反面、手放しでは喜べないジレンマもあります。
根底には、こうしたネイバーフッドデザインのあり方を「自分たちだからできるもの」ではなく、「業界の当たり前」にしていきたい思いがあるからです。
なおHITOTOWAも、書籍の内容のすべてを自分たちのスタンダードにできているわけではありません。「もっとできるようになりたいこと」も書いています。私たちにとってもスタンダードを目指したい内容であることは付記しておきます。
そのうえで、例えば今回の書籍では「コミュニティはサービスじゃない」という言葉に反応してくれる方が、デベロッパーや管理会社の方に多くいらっしゃいました。「なんとなくもやもやしていた部分が、このひとことで言語化された」という方も。
私自身もデベロッパー出身だからこそ言えますが、デベロッパーや管理会社の立場では、コミュニティづくりを“付加価値”としています。つまり、サービスの一環という面も確かにあるので、どうしても「与えるもの」になってしまう。すると「主体性や見識のデザイン」には発展しづらいし、コミュニティが醸成されずにデベロッパーや管理会社が積極的にやり続けなければ、という感覚に陥ってしまう……。
まちや住まいの課題を解決する理想のあり方は、サービスとして等価交換の関係において解決すべきものと、関わる人々が同じ方向を見て一緒につくっていく共創関係において解決できるもの、その両者をかけ合わせていくことです。ただその線引きは、当事者間ではわかりづらいことも。またサービスに頼ることで、本来持っていた/育んでゆくはずだった共創関係を喪失してしまうことがあります。
関連して、あえてがちがちにルールを決めすぎず、余白を残して住民の主体性を育む「ゆるさのデザイン」も大切だと書籍で触れましたが、これもデベロッパーや管理会社の方々にはなかなか難しいと声があがりました。
もちろん、規定やルール、前例が重んじられる文化は、リスクヘッジの観点では理解できます。それもまたノウハウ、ともいえます。ただ規定やルールはどうしても「できないこと」や「曖昧さを排除する」方向に進み、人々の関わりしろや寛容性を失っていってしまう。それでは「コミュニティ」が育みづらいのも事実です。
ここを突破するために、HITOTOWAのような専門家が入ってネイバーフッドデザインを行うのはひとつの形です。ただそこを、これからはHITOTOWAありきで語らなくてもよくなるように、もっともっと、デベロッパー、管理会社、そして住民全体に、一般化・普遍化していきたい。そして「どう普遍化していくのか?」が、新たな問いとして浮かび上がってきています。
利害関係でなく、共創関係をいかにデザインしていくのか。そのためにも、読書会等を通じて、デベロッパー、管理会社の皆さんと改めて学び合っていきたいです。
読書会は、これまでいくつか開催したなかで、2つの方向性が見えてきました。
1つめは、テーマを絞って開催する形。例えば、書籍内のひとつの「メソッド」にテーマを絞り、そのメソッドを深堀りするなどです。デベロッパーや管理会社であれば、関連して社内のプロジェクトを取り上げたり、特定の物件を取り上げたりして、かなり実践的な議論になります。また社内のプロジェクトについて議論を行うことで、部署を越えた横の情報共有になったという声もいただいています。
2つめは、あえて『ネイバーフッドデザイン』以上のテーマを設けない読書会。こちらは主に個々人の疑問に答えていくような形です。前者が実践的ならば、こちらはどちらかというと観念的で、ネイバーフッドデザインの価値観や考え方についてディスカッションしていく形になります。会社などで開催すると、だんだん仕事への向き合い方など、哲学的な話題になっていくこともしばしばです。
いずれの形式も、人数は5〜10人未満ほどがちょうどよいと感じています。少人数のほうが濃い議論となり一人ひとりの満足度が高く、かといって少なすぎると社内の横のつながりを通しての気づきが得にくくなってしまうためです。
デベロッパー、管理会社での読書会開催については詳細をPDF資料にまとめましたので、ご興味をお持ちの方は、こちらからぜひご一読ください。▶【資料】
また今回の反響のなかで、デベロッパーや管理会社の上層部の方々からは「ネイバーフッドデザインが得意な社員を育てたい」という声もいただいています。そのための研修メニューもつくりました。
相互の学び合いを通して、業界として課題を突破していければと思います。またこうした学び合いの場は、純粋に楽しいもの。私も積極的に参加し、皆さまと知見を深めていきたいです。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
ご検討の皆さまは、こちらの資料をご覧ください。
(HITOTOWA INC. 代表取締役 荒 昌史)
HITOTOWAの声