2023-05-18
2023-05-18
はじめまして、HITOTOWAの浅野北斗です。
書籍『ネイバーフッドデザイン』の反響では、「まちづくりに関わる人をどう見つけ、どう育てるのか」「一緒にプロジェクトを行っていく仲間とどう関わっていけばいいのか」など、人材発掘やチームビルディングにまつわるご質問やお悩みの声を多くいただきました。
そこで今回の「How we work」では2回にわたり「仲間と走る」に焦点を当て、僕がまちのプロジェクト現場において「運営メンバーに伴走」するなかで大切にしていることや、時に失敗談、そこから得た気づきなどをお話ししたいと思います。
本題に入る前に、背景として少し僕自身のことを。率直なところ、1年ほど前までの僕は、「プロジェクトの遂行は1人のほうがいい」と思うタイプでした。そのほうが意思決定が早く、効率的で楽ちんだと考えていたからです。
ただ大きなプロジェクトを遂行するには、どうしても1人では限界があります。そこでこの1年ほどは、仲間と協力して遂行するプロジェクトのあり方を試行錯誤してきました。
その結果、今では10人以上のメンバーとともにプロジェクトを推進する日々を送っています。さらに、一人ひとりのメンバーに「まちをよりよくしていきたい」意志があり、一緒に前を向いて関わってもらえているという感覚があります。「1人が楽」と考えていた僕も、今はこの状態を心から「いいな」と思えています。
なぜなら、ともに同じ方向を向いて関わってくれる仲間がいると、「もっとおもしろくなる」種がたくさん生まれると、気づかせてもらったから。そして、「その種が、多様な視点に温かく見守られることでぐんぐん急成長していく」のを、目の当たりにしてきたからです。
不思議なことに、自分の考え方が変化するのに伴い、周りのHITOTOWA社員からも、「北斗は仲間とプロジェクトを推進していくことが得意だね」と言ってもらえるようになりました。何よりも自分自身が一番、ぐんぐんと急成長することができたのです。
ここで、仲間と「ともに同じ方向へ向かう気持ちを持つ」うえで大切なことを痛感した、1つのエピソードをご紹介したいと思います。
さいたま新都心の大規模マンション「SHINTO CITY」では2021年から2023年にかけ、パートナー企業の方々とともに、学びや楽しみなどさまざまな体験を通じて「ゆるやかで心地よいつながり」を育むイベントを開催してきました。
イベント当日は僕たち事務局も共用部にコーヒーのポットを置き、来場された方々にコーヒーをお配りし、コーヒー片手におしゃべりを楽しみながら口頭アンケートにお答えいただくような仕組みを用意しています。
このコーヒー&口頭アンケート企画のアイデアは当初、僕からメンバーに提案したものでした。来場くださった住民の方々の会話の総量を増やしたい、“誰かとしゃべった”経験を持ち帰ってもらいたいという目的意識が背景にあり、「コーヒーを片手に、住民の方々と雑談が生まれるような空気をつくる」イメージが、僕の頭の中にはあったのです。
ただ、そのオペレーションを話し合うべく事務局メンバーに集まってもらったところ、周りからは「しっくりこない」「ハードルが高いのでは?」など、納得いかない反応が。そこで、オペレーションについて詰めていく予定を急遽変更し、いったん立ち止まって、「なぜこの企画を実行するのか」「実行にあたって何がハードルになるのか」など、目的や現状の課題などを中心に2時間、徹底的に話し合うことにしました。
そのなかで気づいたことは、一人ひとりのメンバーが意見を口にするうち、目的や課題を自分自身の言葉で噛み砕いて話せるようになっていったことです。与えられた目的を鵜呑みにするのではなく、一度疑ってみたり、それぞれの解釈を持ち寄ったりしながら、再構築していく。その過程でメンバーの言葉づかいが変わっていくのを感じました。
そして迎えた本番当日。これまでのイベントとは、明らかな変化がありました。
以前の口頭アンケートでは、原稿を読み上げるような印象があったり、住民さんから返ってきた答えに対して「そうなんですねー」で終了してしまったりする場面もありました。
しかしその日は、住民の方の答えに対し、メンバー自身が深堀りして聞くようになっていたのです。「こんなイベントをやってほしい」という住民の方の回答に対し、「なぜ、そういうイベントがいいと思うのか」、「逆に、こういうイベントに来たくないのはなぜか」と追加質問を投げかけるなど、 その人が「人とのつながり」にどんな考え方を持っているのか聞き出すべく、メンバー自ら考え、会話する様子がたくさん見られました。
このときに実感したのは、目的から施策までをみんなで一緒に考えると、これほどまでにメンバーの心構えや言葉づかいが変わるのか、ということ。「僕が1人で目的を決め、そのオペレーションだけをメンバーに任せる」以前のあり方では、見えなかった世界です。
「なぜこの企画を行うのか」「自分たちはどこに向かってがんばればいいのか」。これらを皆で話し合い、一人ひとりが納得して理解していることは、“一緒に前を向く”仲間との関係性をつくるうえで非常に大切、と痛感した出来事でした。
メンバーと目的について話し合ったり、イベント当日の振り返りミーティングをしたりするなかでもう1つ、「仲間と走るっていいなあ」と再認識したことがあります。
それは、視点の多様性から生まれる成長です。噛み砕くと、「温かく見守る目が増えること」の効果といえるかもしれません。
例えば先のコーヒー企画で、イベント当日に住民の方に深堀りして伺った話も、他のメンバーが改めて聞くと「この発言にはこういう意図が含まれていたんじゃない?」と新たな気づきがあることも。
目的や手段の話し合いでも、「目が増える」ことで、1人の考え方に対し「本当にそうか?」「それ以外の方法はないか?」と、別の解釈をするメンバーが出てきます。そして異なる視点があればあるほど、1人では見えなかった方向へと議論が発展していきます。結果として、「今度はこれをやってみたら、もっとおもしろいんじゃない?」と、新たな企画の種につながっていくこともあります。
こうした意味からも、企画の背景から実施、振り返りまでの変化をメンバー全員で観測することは大事なことです。また純粋に、変化をともに観測することはメンバー自身、僕自身の喜びや楽しさでもあります。
そう、メンバーの喜びは、いまや僕自身にとっても大きな喜びになっています。それはこの半年、1つの企画をお任せして、見事に遂行してくれたあるメンバーの姿を見て、改めて思い知ったことでもありました。
次回はそのエピソードをもとに、仲間と走る際に大切にしているもう1つのポイント、「称え合う」についてお話しします。
(HITOTOWA INC. 浅野北斗)
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