2023-05-18
2023-05-18
こんにちは、HITOTOWAの浅野北斗です。
今回は、2回にわたってお届けしている「仲間と走る」の後編です。(前編はこちら)
結論からいうと、僕は「仲間と走る」うえで一番大事なことは「リスペクトと感謝を持ち合う」ことだと思っています。これを僕らは「称え合う」文化と呼んでいます。
称え合うことは、なぜそれほど大事なのか? メンバーにどんな変化をもたらすのか? 僕自身の失敗談とそこから得た気づきも交えながら、お話ししたいと思います。
1年ほど前、まだ「仲間と走る」やり方を試行錯誤していたころのこと。痛い失敗を経験しました。
いま考えると、当時の僕はイベント設計に際し、メンバーに関わってもらうための「余白」や「隙」を残そうと意識しすぎていたのだと思います。書籍『ネイバーフッドデザイン』にもある通り、メンバーの主体性を引き出すため「余白のデザイン」は大切なことですが、当時はまだその塩梅を探っている途中でした。
結果、あるイベント後に振り返りミーティングを行った際、メンバーの多くから「事前の備品チェックをもっとしっかりやってほしかった」「もっと行程や段取りを詰めてほしかった」など、「北斗さん(僕)がもっとこうすべきだった」というネガティブなフィードバックを多く集めてしまったのです。
僕としてはあえて「余白」を残したつもりが、周りからはただ「考えが浅い」と見えていたこと、ネガティブな言葉はショックでした。反射的に、“でも、そう思ったならみんなも早くそう言えばよかったじゃないか”という言葉が、喉元まで出かかりました。ただ、それを言葉にする直前で飲み込んだとき、あることに気づいたのです。
それは、“ああ、自分は、まず称えてほしかったんだな”ということでした。
僕たちが取り組む「ゆるやかな人と人のつながりづくり」はある意味、“完璧な正解”のないこと。だからこそのやりがいもある反面、初めてのことには誰しもが迷いや不安も伴いながら、試行錯誤して道をつくっていく仕事です。
そのなかで何かの企画が実行されたということは、誰かが一歩踏み出したということでもある。ならばまずは、その一歩を踏み出したことへのリスペクトと感謝を持つことが、何よりも大事ではないだろうか?
自分の感情の動きを分析してみると、そうした気づきにつながりました。
もちろん、反省をふまえて今後の企画を改善していくことは大事です。ただ、仕事の現場はそもそもがどうしてもクリティカル(批判的)な思考になりがち。だからこそ、「まず、称え合う」文化を大事にしたいと思ったのです。
以降の僕は、「改善点を出し合う振り返りをやめましょう」と、ことあるごとに提案するようになりました。脱「改善点を出し合う振り返り」宣言です。新しい企画が始まる際のキックオフミーティングでも、冒頭でその心構えを共有するようにしています。
「称え合う」文化のなかで僕自身が感じた変化の1つに、「メンバーが何かを実現できたとき、自分ごとのように喜ぶことができるようになった」ことがありました。
「自分が改善案を出して直してもらう」と、どこか「指示したことをやってもらっている」感覚が残ってしまうような気がします。そうではなく、メンバー自らの意志で考えたことに取り組んでもらい、僕はそれを称えながら伴走する。その結果、本人が自分の思いを形にできたとき、大きな喜びを感じます。
それに気づいてから、積極的に企画をメンバーに「お任せ」するようになりました。またその際にも、「あなたのこういうところがとても素敵だと思うから、この企画をお任せしたい」と、リスペクトの気持ちを言語化して明確に伝えることを意識しています。
ここで1つのエピソードをご紹介します。
当社のソーシャルフットボール事業には「colo coloボーリング」という、遊びながら学べる「防災クイズ」があるのですが、既存の「防災クイズ」をマンションのイベントでやってみた際、インターンメンバーのSさんがふと素朴な疑問を投げかけてくれました。
「この問題、子どもたちにはちょっと難しすぎませんか?」
僕は「難しい問題でも、親御さんと話すきっかけになればいいのでは」と解釈していましたが、Sさんは「もっと子ども自身が考えて回答でき、成功体験を得られるような場にしたほうがよいのではないか?」等、目的や課題意識とのセットで、新しい防災クイズづくりの提案をしてくれたのです。
話を聞いてみると、そのマンションの住民の方々に寄り添いながら、HITOTOWAが目指すものを的確に捉えた提案だと僕も感じました。「防災クイズ」の改訂は“必須”ではないかもしれない。ただ、「まちにとってよりよい状態」を目指すには、ブラッシュアップが必要だと思う──。そうしたSさんの視点は、僕にはなかったものです。
そこでSさん本人にも、「今あるものを疑ってみて、本質を追求する姿勢」や「住民の方々に寄り添い、その視点で提案ができる」ことがすばらしい、とリスペクトを伝えるとともに、ぜひそれを活かして「防災クイズ」づくりをお任せしたいと話しました。
それからSさんが主導となり、半年ほどかけて今年の3月に無事、新しい防災クイズ集を1冊完成させてくれました。その中には「公園のブランコやすべりだいが壊れているときはどうしたらいいかな?」「地震のとき、おうちの中で危ないのはどんなことでしょう?」といった小さなお子さん向けの問題も用意するなど、彼女の視点を生かした工夫が凝らされています。
早速マンションの防災イベントでお披露目したところ、住民の皆さんにも大好評。子どもたちも「これ知ってるよ! 高いところに本を並べていると、地震が起きたら本が落ちてきて怪我しちゃうんだよね!」と解説まで繰り広げてしまうなど、楽しく取り組んでくれていました。
これを受け、Sさんからは2冊目、3冊目の防災クイズブックをつくっていきたい、という提案もすでにもらっています。
住民の方々からの好反応や、やりきった充実感にあふれるSさんの笑顔もあり、防災クイズ改訂のエピソードは、僕にとっても思わず涙が出るほど嬉しい出来事でした。それこそ「1人だけで走っていた」1年半前には絶対に見られなかった景色を、見せてもらったと深く感謝しています。
実現したのは、Sさんの力です。僕が依頼したことではありません。彼女自身が課題意識を持ち、本質的な目的から具体的な方法までを考えて、やり遂げたこと。
そのなかで僕が何をしていたかといえば、それこそ「称える」ことくらいです。
後日、Sさんを含めて何人かで話す機会があったのですが、そのときにSさんは僕の伴走についてこんなコメントをくれました。自分で紹介するのは気恥ずかしいですが(笑)、とても光栄だとも思ったので、少しだけ引用させてください。
「北斗さんは、私のアイデアをものすごく褒めて肯定してくれるのと同時に、『こういう観点を入れてみたら?』と押し付けではない形でアドバイスをくれながら、土台を一緒につくってくれた。土台固めが終わったら、『あとはやりたいように1回やってみなよ』と任せてくれたので、プレッシャーもなく、安心感のあるなかで『よし、自由にやってみよう』とのびのびやることができ、自分の自信につながった」
本人へのリスペクトや感謝、称える気持ちが伝わっていたこと、それが彼女の背中を押す一助になっていたことを教えてもらい、とても嬉しく思いました。そして彼女が僕をこうして“称えて”くれること、“称え合い”の文化が根づいてきていることもまた嬉しく、ありがたく思っています。
さて今回のHow we workでは2回にわたり、「仲間と走る」ことについて、僕の気づきをお話ししてきました。
全体を通して、僕の話は「こうするべきである」という話ではなくて、「こうすると、もっと楽しいよ、おもしろいよ!」という話なのだと思います。
「社会課題解決に取り組む」というと難しい思考になりがちですが、僕は結局のところ、「一人ひとりが楽しい、おもしろいと思うことに取り組むことが、ゆくゆくは社会課題の解決や、誰かを救うことにつながる」と信じて、日々を歩んでいるところです。
これからも仲間と走る一員として、メンバーそれぞれの楽しさや喜びを「最大化」できるような動き方を、もっともっとできるようになっていきたい。そのために、これからも試行錯誤を続けていきます。僕が持ち得る、最大のリスペクトと想像力をもって。
(HITOTOWA INC. 浅野北斗)
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