2026-01-23
2026-01-23

HITOTOWA.INCは、2025年12月24日に15周年を迎えました。
代表の荒は「たくさんの困難もあったけれど、それ以上に喜びや生み出してきたものがある」と、多くの方々に出会い支えられて今日があることをかみしめています。
これまで周年のお祝いの日に合わせてHITOTOWAの公式noteでは「アドベントカレンダー」をリレー形式でお届けしてきました。社員が思うネイバーフッドについてそれぞれの思いをつづっています。
15周年企画「アドベントカレンダー」はこちら

去る12月12日に開催した社員一同が集ったHITOTOWA15周年記念の勉強会の様子をお届けします。朝から夕刻まで、まる1日。立ち止まりふり返り、未来へ思いを馳せた時を前編・後編の2本立てにしたレポートです。
目次
年の瀬も迫ってきた12月の週末。私たちは15周年を祝う学び・語らい・探究する会を開催しました。
普段は、東は1都3県、西は兵庫・大阪を中心に仕事をするHITOTOWA社員。この日はHITOTOWAのオフィス周辺で一堂に会しました。
2025年の春に代表・荒の住まいの近くである東久留米市・学園町にオフィスを移しました。今回の学びの会の会場は、その新オフィス「四季の平屋」から徒歩20分ほどの場所、南町にある「タネニハの森」です。


市内で緑花の生産者として代々営んできた秋田茂良(あきた・しげよし)さん一家が営む「花のある自然で美しい暮らし」を見つけられるような食・住・農や緑花の風景が共存する場所。今は農園(タネニハファーム)、生花店(アトリエ華もみじ)、カフェ&レストラン(「フィリッポの幸せな食卓 felice di filippo」)が肩を寄せ合っています。
そして今新たな取り組みも始まりました。かつて一角にあった雄大な小麦畑は相続をきっかけに手放さざるをえなくなったのですが、まちの緑や風景を守りながら、新たな暮らしを一緒につくる人々に集まってほしいと「タネニハの森 Farm Village」を生み出す予定なのです。
ただ敷地いっぱいに建物を詰める宅地開発をするのではなく、東久留米の土、水、風、木々と共存し、タネニハの森の四季折々の営みを感じられる、人と環境がゆるやかに共生する共感を大切にした住宅プロジェクトです。
HITOTOWAの新規事業である「ひととわ不動産」では、現在このプロジェクトに伴走しています。

まず学びの会の第一部は、秋田さんをゲストにお招きし「タネニハの森」を歩き、感じ・聴き・話すフィールドスタディを行いました。
小麦畑の向かいにあるレストラン「フィリッポの幸せな食卓 felice di filippo」を出発点として散策を開始。「タネニハの森」の今とこれからについて深めていきます。
ここ数年、相続の件も然りですが、この土地や農業はどうあることが理想なのか、常に考えていた秋田さん。


荒:豊かな畑や森林、原風景たち。これらは今、都内で目にすることが少なくなってきました。ましてや触れることもできなくなったように思います。この豊かな風景たちが、タネニハの森には存在している。素晴らしいことですね。
秋田さん:未来に向けて失いたくない風景だと思います。そう考えた時に、ここを自分たちだけのものではなく、地域の方々にも何か感じ取れる場になってほしい。この土地の持つ豊かさを共有したいという思いが高まっていきました。ただの農園・畑・レストランだけではなく、花や植物が好きな方が集えるような場を作りたいと構想したのが「タネニハファーム」だったのです。
荒:「タネニハ」にはどんな意味があるんですか。
秋田さん:さまざまな種がまかれ、育つ場所という意味が込められてます。 種って始まりでもあり終わりでもありますよね。生まれ、土に還っていき、そしてまた育つ。タネニハで育った思いや集い、活動の形は、ここで次世代につなげ、次世代にまた育んでもらう。こんなふうに循環していけたらと考えたのです。この場所が人と植物と自然の交差点になればいいなと願っています。
荒:そこに今夏誕生したのが、レストランの「フィリッポの幸せな食卓 felice di filippo」ですよね。
秋田さん:「タネニハファーム」から派生して誕生したんです。生花店を営む妻の「花や緑を慈しむことができるカフェを営みたい」という願いからスタートし、新潟の設計事務所さんにお願いして出来上がりました。


荒:フィリッポといえば、石神井公園にある「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」を思い起こします。
秋田さん:そうです。同店のオーナーが、わたしたちのフィロソフィー・取り組みに共感をしてくれて、今回サポートいただいたんです。そのおかげで「フィリッポの食卓」としてオープンしました。ピッツァをはじめ、ワンプレートメニューやスイーツなどが楽しめますよ。
荒:かつて小麦畑のあった風景を目の前に、小麦にこだわったピッツァを味わうのはなんとも至福の時間ですね。
秋田さん:北海道の江別製粉との共同開発によって作った小麦粉を使っているんです。甘みと香りがふわりとただよう、歯切れのよい生地です。野菜にも注目してくださいね。「タネニハファーム」で収穫された野菜や、近隣の農家で収穫された野菜を使用しています。農の風景と手塩をかけて生産した農産のうまみを噛みしめるひと時になると思います。ぜひ立ち寄ってほしいですね。




荒:このカフェ&レストランにはどんな思いが込められているのでしょうか。
秋田さん:「フェリーチェ」はイタリア語で幸せという意味なんです。幸せについて考えたときに、私たち秋田家もまた新たな幸せを模索していたのです。
秋田家は江戸時代に柳窪新田に入植し、開墾しました。それから農家として代々受け継ぎ、300年の歴史を有しています。とはいえ今、時代は大きく変化しています。農業が12代続いてきたとしても、未来に向けてどこまで続けられるか私たちもわからないのです。
荒:秋田さん一家が「こうありたい」と描いた理想の姿へと変化していっている。
秋田さん:農業が半分、食と住が半分というように一つのことにこだわらない、されど豊かさや幸せを感じられるような場所にしたいなと描いていますね。


これまでの話であったように、秋田一家は変化の時期を迎えています。「タネニハの森」を広げていく過程で、秋田緑花農園としては花の生産は続けるものの、生産卸売事業を終了することになりました。
秋田さん:きっかけは自分の心身の変化ではありましたが、思い描く理想の生産形態にするためということもあります。
荒:今の社会の変化するスピードは早く、著しいですよね。

秋田さん:人類は長い間「衣食住」という大きな安心と安全を求めてきました。食べられないと飢えますし、厳しい自然環境から身を守るために家も必要です。
私たちの1番の目指すべきことは、美しい風景を守ること。ただその前にまず私たちが人として命を守り生きていく、そんな根源的な欲求を満たすものをつくり上げていかなければと思っているのです。
荒:人の欲求の根源を満たす、とは。
秋田さん:マズローの5段階欲求説における「生理的欲求」「安全の欲求」ですね。これらは5つの欲求の根底にあるものです。その先に「理想を体現」という一つ上の段階があります。つまり欲求の足元を固めた上で、花という美しいものを愛でるという「理想を体現」する文化を紡いでいきたいですね。
荒:まさに今、食と農に携わり、さらにこれから住にも携わろうとしています。
秋田さん:手放す予定の小麦畑は単なる相続・売買ではなく、きちんと環境と共生できる住宅にしていきます。経済性を重視した画一的な宅地開発にはしたくない。豊かな環境との共存が目指す姿です。
荒:タネニハの森の活動のこれからは実に多岐に渡りますね。広がり続けていく未来の姿が楽しみです。




タネニハの森ではこれから始まる住宅プロジェクトの他に、すでにペットとの共生、環境との共生をする賃貸住宅、商業施設の「kinone」や、コミュニティスペース・畑を持つ「ツクルメの家」などを営んでいます。これらの先導を率いるのは、タネニハ不動産の荒川博典(あらかわ・ひろのり)さん。荒川さんは、元々は東久留米にある不動産会社の役員でした。秋田さんとはオーナーと管理会社のいち社員という関係だったのです。


荒川さん:元々私は北海道生まれ。転勤族だったので各地を転々としていました。東久留米は生まれた場所でも、育った場所でもないんです。地域密着の不動産会社に就職して配属されたのが東久留米でした。
荒:その後人生のほとんどの時間を東久留米で過ごしてきたそうですね。
荒川さん:24年間勤めました。不動産屋は人と話を深めていくことが大切な仕事の一つでもあります。時間をかけて会話を重ねる中で交流が生まれ、親密になる。こうしてまちには関係を築き上げた人たちがたくさんいるんです。だからか、このまちに対して実家よりもふるさとみたいな感覚を抱いています。

荒:秋田さんとの出会いは仕事を通じてだったわけですね。
荒川さん:そうですね。先代の時からのお付き合いです。秋田家が所有するたくさんの家や建物を預かっていました。とはいえ、ただのオーナーと管理会社の人という関係性ではありません。仕事を超えた交流があると感じています。長年互いの想いが交錯し、深めていく中で、秋田が描く「タネニハの森」の構想を広げていきたいということを聞いたんです。そこで私も一緒にすることになりました。今から4年前のことですね。
荒:荒川さんが参画されたことでよりプロジェクトの深みが増していった
荒川さん:タネニハの森を作り上げる私たちは今、グループ化するほどになりました。不動産・飲食事業、農作物を扱う事業、花の販売事業の3つのグループがあり、私たちはタネニハグループと呼んでいます。私の担当するセクションでは不動産を扱っています。ですが、地域と人、人と人をつなぐということを大切に意識して活動をしています。
私が取り組みを通じて、まちでこれまで過ごしてきて感じたことは、このまちには溢れるほどの魅力があるということです。
荒:そうですね、たとえば自然が豊かなことは、何にも代え難いものがあります。


荒川さん:東京の名水57選に選ばれる湧水がまちなかに湧いていて、緑地もたくさん残っていますよね。都会ほど人の距離感も密集しすぎてない、ほどよい距離感がある。ちゃんと顔が見えて交流が図れる。さらに池袋からも電車で20分ほどと都心にも程よい距離でアクセスすることができるんですよね。


荒:暮らしている人ほど当たり前のことすぎてその魅力に気づいていないのかもしれません。
荒川さん:だからこそ、外からやってきてこのまちに住み始めた自分のような立場の人が、暮らしやすいまちであるということをもっとしっかり伝えていきたいと思っています。そして、長年過ごしてきたまちに自分がいただいたものをお返ししていきたいという気持ちです。

荒:タネニハの森の目指すところと重なっていますね。
荒川さん:はい。みんなが一緒に気持ちよく暮らせるまちになったらいいな、とそのために衣食住にまつわることを、特に私は「住」の部分にフォーカスしながらつとめていっています。

タネニハの森の秋田さん、荒川さんの描く未来は誰もがこの土地の持つ風景や暮らしやすさを享受し、そして未来に受け継ぐつながりをつくることなのかと感じました。そしてそれはまた私たちHITOTOWAがこれまで取り組んできた「ネイバーフッドデザイン」、そして新たに取り組んでいる「ひととわ不動産」の精神とも通じるように思います。
これからも互いのフィロソフィーを理解し、共に手を取り合い、このまちを守っていけたらと思わずにはいられませんでした。
後編では、これまでHITOTOWAが根幹として関わってきた、西東京市/東久留米市にあるひばりが丘団地の活動の今と未来について考えていきます。
(HITOTOWA INC.代表取締役 荒 昌史/取材・執筆・編集 永見 薫/撮影 千葉愛子・タネニハの森)
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