2020-07-20

#15 ひとごとじゃない、子ども虐待のいま

こんにちは。『HITOTOWAこども総研』の西郷です。

『HITOTOWAこども総研』では、子ども家庭福祉分野の調査研究を行っています。2019年度は、子ども虐待や特別養子縁組をテーマにした調査研究を実施してきました。

現在、「子ども虐待」は大きな社会課題になっています。近年の重篤な事件を見て、胸を痛めた方も多いのではないでしょうか。

子ども虐待の現状を知り、「個人や地域できること」をみなさんと一緒に考えていくために、今回から2回シリーズで「子ども虐待」について取り上げます。第1回のテーマは、「ひとごとじゃない、子ども虐待のいま」です。

そもそも、子ども虐待って?

突然ですが、みなさんは子どもにストレスをぶつけてしまったことはありませんか? 不適切だと感じる子育てをしたことはないでしょうか。

心の中で「いや、あるよ……」と思った方、大丈夫です。

おそらくほとんどの親御さんが、心当たりをお持ちなのではないかと思います。多くの親にとって、子育ては未知の経験。子の成長とともに、親としても失敗や成功を繰り返しながら、子育てを学んでいきます。


 
恥ずかしながら私自身、9歳の娘に対して、つい言い過ぎてしまったなと思うことも。また気持ちに余裕がなくなり大きな声で怒ってしまったことや、子どもが眠っている間に外出して怖い思いをさせたことなど、振り返れば思いあたることはいろいろとあります。

このように、大人が子どもに不適切なかかわりをすることを「マルトリートメント(不適切な養育)」と呼びます。これは子ども虐待の概念を広くとらえたもので、諸外国では一般的になっています。

 
子ども虐待とは、親の意図ではなく、「子どもの立場から判断されるもの」。親が一生懸命にした行為だとしても、それが子どもにとって悪影響があれば、不適切な養育になるのです。

過去のことをなかったことにはできません。でも、これからのかかわり方を変えることはできます。「子どもの立場に立ったときにどうか?」という視点を持ち、周囲の力を借りながら、より良いかかわり方を考えていくことが大事だといえるでしょう。

身体的虐待よりも、多いのは……?

これからの対策を考えるためにも、まずは子ども虐待の現状を理解するところからはじめましょう。

子ども虐待には4つの種類があります。

それが以下の表にある「身体的虐待」「心理的虐待」「ネグレクト」「性虐待」です。保護者が子どもに行う次のような行為を、子ども虐待と呼びます。

図表1:子ども虐待(児童虐待)の定義
 

(出典)児童虐待の防止等に関する法律第2条を参考に作成

 
この4種類のうち、もっとも多いものはどれだと思いますか……?

平成30年度に児童相談所が受けた児童虐待相談の種別では、「心理的虐待」の割合がもっとも多く(55.3%)、次いで「身体的虐待」(25.2%)となっています。

虐待というと「身体的虐待」を想像しがちですが、実際には「心理的虐待」が2倍の件数なんですね。

図表2:児童相談所における児童虐待相談の相談種別

(出典)平成30年度福祉行政報告例を参考に作成

 
続いて、「件数」についても現状をみてみたいと思います。児童相談所が対応した「児童虐待の件数の推移」がこちらです。

図表3:児童相談所での児童虐待相談の対応件数推移


(出典)厚生労働省(2020)「社会的養育の推進に向けて(令和2年4月)」

毎年、増加傾向が続いていますね。

その背景として、「虐待の解釈が広がっている」ことも理由とされています。ただそれを踏まえたうえでも、「対応する必要のある事案」が増
え続けている
のは事実です。

参考までに数値をご紹介すると、平成30年度の児童虐待対応件数は、全国の児童相談所で159,838件、市町村で126,246件という結果でした(※1)。

ご近所で「虐待かも?」を見かけたら

ところで子ども虐待は、どんな経路で相談・通告されることが多いと思いますか?

その相談経路は、警察等(49.5%)、近隣・知人(13.4%)、学校等(7.2%)、家族(7.0%)の順で多くなっています。近隣・知人からの相談が1割を超えているのですね(※2)。

「子ども虐待かも」と思ったら、すみやかに児童相談所や市町村に相談・通告し、早く支援につなぐことが大切です。

知らない方も多いですが、法律でも、「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者」はすみやかに児童相談所・市町村等に通告することが義務づけられています。児童相談所の無料の虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」にかけると、近くの児童相談所につながります。ぜひ覚えておいてください。

 
さて最後に、相談・通告後はどのようなプロセスをたどるのでしょうか?

児童相談所が子ども虐待として対応した件数のうち、多くのケースでは児童相談所等が情報収集やアセスメント(評価)を行い、個別の支援方針を立てた上で、家庭で支援を行います。

一方、子どもの保護が必要と判断され、一時保護される子どもは約16%、施設入所や里親委託になる子どもは約3%います(※3)。

図表4:相談・通告から支援までの流れ


子ども虐待による影響は、虐待を受けていた期間や状況、子どもの年齢等によりさまざまです。ただ、子どもに身体的影響、知的発達面への影響、心理的影響を及ぼすことがわかっています。

また子ども虐待は、長期的な影響も含めると年間1.6兆円(2012年のデータによる試算)の社会的コストがかかるという試算も出ています。社会的な損失も甚大です(※4)。

子ども虐待の予防や対応をしていくために、私たちは何ができるでしょうか。そしてHITOTOWAのネイバーフッドデザイン事業の中で、どのようなことができるでしょうか。

次回は、地域コミュニティが子ども虐待予防のためにできる、4つのことをテーマにお伝えします。

※1 各都道府県および政令指定都市等が設置する児童相談所と、市町村は、それぞれ対応件数を集計している。
※2 平成30年度福祉行政報告例による割合。
※3 厚生労働省(2020)「社会的養育の推進に向けて(令和2年4月)」による割合。ただし、一時保護は虐待を要因として平成30年度中に一時保護を解除した件数(延べ件数)、施設入所等は虐待を要因として平成29年度中に措置された件数(延べ件数)による参考値。
※4 Wada Ichiro, Igarashi Ataru (2014) ”The social costs of child abuse in Japan” Children and Youth Services Review 46: 72–77

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人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決します。 街の活性化も、地域の共助も、心地よく学び合える人と人のつながりから。つくりたいのは、会いたい人がいて、寄りたい場所がある街。そのための企画と仕組みづくり、伴走支援をしています。

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