2020-07-20

#16 地域コミュニティが子ども虐待予防のためにできる、4つのこと

こんにちは。『HITOTOWAこども総研』の西郷です。

前回は「ひとごとじゃない、子ども虐待のいま」をテーマに、子ども虐待の定義や現状について書きました。今回は、「地域コミュニティが子ども虐待予防のためにできる、4つのこと」について考えていきたいと思います。

新築マンションでのアンケート「子育てが不安」が約6割

HITOTOWAでは、ある新築マンションで入居から3ヶ月後に、子育て世帯のアンケート調査を行ったことがあります。回答者は、別の市町村から引越しをしてきた方が4割、子どもの祖父母の居住地は電車バスで1時間以上の方が6割いました。

「子どもがうまく育っているか不安になるかどうか」という設問に回答してもらった結果が下記です。

図表2:子どもがうまく育っているか不安になる(n=49)
 

 
「あてはまる」+「ややあてはまる」の合計は(57.1%)でした。これは、調査対象者の年齢属性等が近い全国調査と比べて高い結果です。

また「子育てで時間に追われて苦しい」と答えた割合は4割、そして子育ての悩みを相談できる相手については、「ひとりもいない」の割合がもっとも多く、5割を超えているという結果でした。

もちろんこの結果は、どの地域でも一般化できるものではありません。ただ新しい街に引っ越し、初めての子育てをしている家庭では当てはまることも多いのではないでしょうか。

虐待のリスク要因を減らすには?

こうした育児不安など保護者の要因や、地域社会からの孤立といった養育環境の要因などは、子ども虐待のリスク要因として挙げられるものです。

子ども虐待は、以下の図のように複数の要因が重なった場合に引き起こされると考えられています。

図表3:子ども虐待のリスク要因



(出典)厚生労働省(2013)「子ども虐待対応の手引き」等を参考に作成

 
では、それらの要因を軽減していくために、どんなことができるでしょう?

子ども虐待への対応には、第1次〜第3次予防と呼ばれるものがあります。

第1次予防は、虐待のリスクがある・なしを問わず、「子どものいるすべての家庭を対象に支援を行うもの」です。そして第2次予防は、「虐待のリスクがある家庭を対象に行うもの」、第3次予防は、「虐待の再発予防を目的に行うもの」です。

その第1次予防(子どものいるすべての家庭を対象に支援を行うもの)として、地域コミュニティでできることを考えてみましょう。

地域コミュニティができる4つのこと

①子育て世帯どうしや、ご近所との身近なつながりづくり
これは、子育てをおたがいに支え合える(支える⇄支えられる)、身近な関係性を育むことです。現代は核家族化や地域コミュニティの希薄化によって、子育てを家庭だけで完結させがち。身近な友人・知人と協力するには、交流の場づくりが貴重なきっかけになるでしょう。
 

図表4:子育て世帯の環境とネイバーフッドデザイン



筆者作成


こうしたつながりをつくる場合、ソーシャルキャピタル(社会的関係資本)の観点からは、タイプが近く結束力が強い関係性だけでなく、「異なるタイプの人やグループとのゆるやかなつながり」をつくることも重要です。
 

②子育て世帯と地域のリソースをつなぐ
地域には、保育園や児童館、地域子育て支援拠点や子育て支援の団体、公的サービスなど、さまざまな資源があります。親子で安心して楽しめる機会や、いざというときに子どもを一時的に預けることができるサービスは、保護者の負担軽減にもつながります。

HITOTOWAでは、地域の保育園に協力をしてもらい、育児にまつわる悩み相談の機会をつくっています。また保健師さんなど、専門職の方との接点をつくる活動もしています。


③子育てに関する情報提供や、情報交換の機会の創出
子育てに関する一般的な情報は、市町村の子育てサイトなどでも確認ができます。ただ、WEBサイトだけでは得られない“生”の情報が欲しい家庭もたくさんあります。おすすめの子育て支援施設や病院、お店などの情報交換などなど……。これらは特に「新しい街での子育て」をする家庭にとって大切なものです。




④子育てプログラムの実施
子育ては多くの親にとって未知の経験ですが、「子育ての仕方」や「コツ」をきちんと学べる場は日本ではまだ多くありません。そうした悩みや不安を解消するために、ペアレントトレーニング(保護者がより良い子育てを学べるプログラム)や子育て講座などを実施するのもよいでしょう。ママだけでなく、パパにも参加してもらえる工夫があるとよりよいですね。

そしてもし、地域で虐待の疑いを感じたら。

早期に行政などの支援につなぐことを、ぜひ覚えておいてください

 
課題を抱える家庭は、支援を必要としている家庭です。子ども虐待がエスカレートする可能性もある中で、相談・通告は「支援の入り口」になります。

終わりに

「1人の子どもを育てるには、1つの村が必要だ」という言葉があります。

これは、子育ては親だけではできないことを表しています。子育ては、身近な知人やご近所、地域の理解・協力が不可欠です

まずは、これを読んでくださったあなたの半径5mから。子どもや子育てを見守り、ときに、温かい声かけができる関係性をつくってみませんか。

そうした地域の積み重ねが、子ども虐待を減らすことにつながっていくでしょう。

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人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決します。 街の活性化も、地域の共助も、心地よく学び合える人と人のつながりから。つくりたいのは、会いたい人がいて、寄りたい場所がある街。そのための企画と仕組みづくり、伴走支援をしています。

http://hitotowa.jp/

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