2022-04-18

地域コミュニティ活動“あるある”解決のヒント、ちりばめました。現場目線で語る、書籍『ネイバーフッドデザイン』【出版記念対談vol.2 出版タスクフォース編】

interviewee:

4月21日、HITOTOWA初の単著である『ネイバーフッドデザイン──まちを楽しみ、助け合う「暮らしのコミュニティ」のつくりかた』が発売されました!

出版記念・第2弾となるこのインタビューでは、出版タスクフォースとして荒と隔週でディスカッションを続けてきた奥河洋介寺田佳織田中宏明の3名に話を聞きます。

日々、エリアマネジメントやマンションコミュニティづくりの現場に入り、異なるプロジェクトで「ネイバーフッドデザイン」の最前線を体感している3人。その視点から書籍づくりの過程で考えたこと、また出版を経て思い描く、今後の展望とは──?

 目次 

 

 

異なる現場の知見を集結し、世に伝えるチャレンジ

──まずはそれぞれの担当プロジェクトを教えてください。

田中:僕はもともとインターンで、西東京にあるひばりが丘団地のエリアマネジメントの事務局として関わり始めました。入社6年目の今は、川崎にあるフロール元住吉を主に担当。マンション内に常駐しながら、入居者のコミュニティも見守る管理人「守人」や、マンション共用部にありながら地域にも開かれたコミュニティスペース「となりの.」の運営をしています。

奥河:私は関西を拠点に動いています。書籍にも登場する、兵庫の浜甲子園団地でのエリアマネジメントが始まる際に入社して、6年目です。数年間は運営主体である「まちのね浜甲子園」に常駐する日々でしたが、今は少しずつ住民の方々に運営主体を移行している時期なので、自分が現場に行く日数は減ってきています。一方で、新たに関西で行っていくネイバーフッドデザイン事業の企画業務に動き始めているところですね。

寺田:私は2人と違って、拠点に常駐するプロジェクトは担当したことがなくて。担当になった地域に通いながら、企画から実施まで伴走する一気通貫したプロジェクトを複数持ちながら、5年間走ってきました。マンション内のコミュニティ醸成のための企画・実施や、管理組合におけるコミュニティ委員会の立ち上げなど。埼玉県越谷市の「みずべのアトリエ」というコミュニティ拠点の企画や仕組みづくり、その後の伴走も行いました。

「みずべのアトリエ」プロジェクトでファシリテーションを行う寺田

──皆さんプロジェクトも異なり、現場への関わり方も多様ですね。そんななか、社内プロジェクトである出版タスクフォースはどのように始まったのでしょう?

奥河:立ち上げは、ちょうどコロナ禍が始まったころ。それぞれのプロジェクトが一時的に動きづらくなり、社内でいろいろな改革を進めていこう、と複数のタスクフォースを立ち上げたんです。出版もそのひとつでした。

寺田:私は以前から、出版について荒と話していて。やはり現場で先進的なものをつくるなかで、それをクライアントとHITOTOWAの間だけで収めるのではなく、世に発信していきたいと思っていました。当時は、ひばりが丘のエリアマネジメント組織の運営事務局を、住民の方々へと引き継ぎしたタイミング。他にも様々な現場での集合知が蓄積し、社内的にも、体系的にネイバーフッドデザインを語れるようになってきた時期だったと思います。

まちに関わる人の「使えるヒント」が見つかる本に

──出版プロジェクトとしての議論を始めたころ、印象的だったことは?

田中どこに焦点を当てるか、誰に届けるか、どんな変化をまちにもたらしたいか。特に「誰に届けるか」は、現場で見ているものが違う分、各自に思い入れがあって。たとえば荒は前職の経験もあり、デベロッパーの方にお届けしたい思いが強くあった。僕はどちらかというと、まちで活動するNPOや法人、自治会などもう少し広い層の方々に「こんなことをやっているプロジェクトや地域があるんだ」と知ってもらい、それぞれのまちでアイデアが出るようになってほしいなと思っていて。意見交換しましたね。

「となりの.」でまちで活動する方たちとの意見交換

寺田ノウハウ本にしたくはない、という話も出ていました。自分たちのやり方が唯一の「正解」だとは、私たちも思っていなくて。ただ、エピソードだけを集約したエピソードブックにもしたくないよねと。エピソードも交えつつ、何かひとつのポイントでもいいから、まちに関わる方への「ヒント」があるような本にしたいというのは、当初から話していたと思います。

──書籍ではネイバーフッドデザインを「未来とゴール」「機会」「主体性」「場所」「見識」「仕組み」、と6つのデザインに分けています。この構成はどう決まったのでしょう?

田中: 6つの分類は、メソッドとしてもともと社内にあったものです。ただ、以前はそれぞれの内容を、厳密には深堀りしきれていなくて。出版タスクフォースでは一つひとつのメソッドについて丁寧に議論しながら、ブラッシュアップしていきました。

寺田:最初は6つのデザインそれぞれについて、当てはまりそうなエピソードを社員全員でどんどん出していくところから始めて。

奥河:そう、紹介したいエピソードはいくらでもあって。ただ、そのエピソードを通して、読者に何を伝えるのか。単にエピソードを紹介するだけでなく、6つのデザインのどこで、どのエピソードを紹介していくのかはとても意識して考えました。

「待てる」プロジェクトが、一人ひとりの幸せにつながっていく

──書籍『ネイバーフッドデザイン』の中で、印象に残っている一節と、その理由を教えてください。

寺田:私は第3章「未来とゴールのデザイン」の、「解決策のパズルが組み合わさる」というところ。「組み合わせる」ではなく「組み合わさる」という表現を選んだことが印象に残っています。

コンサルタント的な立場で関わるなかでは、戦略的な視点もあり、どうしても「組み合わせよう」としてしまいがち。でも本当は、未来像やゴールをしっかり設計して、焦らず伝え続けていれば、自然とパズルのピースは組み合わさっていくんですよね。ここは多くの方が悩んでいるポイントだと思うので、しっかりと言葉にでき、ひとつの小見出しとして置けてよかったなと。

奥河:確かにそこはこだわったね。私が特に印象的だったのは、第5章「主体性のデザイン」の「もう一歩、もう半歩に寄り添う」という部分です。これはどんな立場やライフステージの人でも、それぞれの立場から「もう半歩」でも踏み込むことをサポートするという意味で。

私自身、地域の活動で「いかにまちの人に関わってもらうか」の実践をずっと続けてきて。一人ひとりに寄り添って動いていくことは意識していたし、それによって主体性は引き出されていくと信じていました。足りないピースを探すような“担い手”探しではなくて、あくまで一人ひとりに合った半歩、一歩に、外部者として寄り添う。そんなメッセージが込められたかなと思います。

田中:同じ「主体性のデザイン」の中で僕が特に好きなのは、「その人の幸せのために行動する」ですね。やっぱりまちのプロジェクトはで、「その人の輝き方をどうつくっていけるか」が、大変でもあるけれど、やりがいにもなっていると感じていて。

僕らの取り組みって、「待つ」要素が結構大きいと思うんです。「こんなふうになってくれたら嬉しいな」と思いながら種まきをして、それぞれの方に関わり方を用意して、じわじわ芽が出るのを待つ。そうやっていい意味で「待てる」プロジェクトが楽しいし、そういうエピソードがたくさん出てくるのもHITOTOWAならではだなと思いました。その分根気がいるな、とは思いますけど。

──無理やり何かを当てはめるのではなく、種をまき、芽が出て、自ら花開くのを待つ。「組み合わせる」ではなく「組み合わさる」の話ともつながりますね。

本質を捉える力と、現場の「翻訳」力と

──ネイバーフッドデザインの現場と、書籍の議論を行き来するなかで、何か変化はありましたか?

寺田:住民の方やクライアントの方に説明するとき、言葉遣いが変わりましたね。たとえば書籍の「未来とゴールのデザイン」では、「まちの現在地を捉える」重要性を語る部分があって。ここは一番大事なんですが、現場では「ヒアリングや調査業務ってそこまでする必要あるの?」という反応があったり、なかなか説明に時間がかかる部分なんです。

さっき「待つ」という言葉も出ましたが、クライアントの方には、早く座組みをつくりたい、と思う方も多くいらっしゃる。そこで「いや、ちょっと待ちましょう」とお話する際、以前は自分の経験や感覚をもとに説明していました。それが体系的に説明できるようになったのは、変化だなと感じます。

田中:書籍にまとめる過程でいろいろな言葉の使い方を統一できて、社内でもその基準をもとに議論できるようになってきましたよね。「未来とゴールのデザイン」はプロジェクトの根幹だけれど、以前はその捉え方が社内でも少しずつ違っていた。でも今は「このプロジェクトはゴールの部分がまだ曖昧だから、そこに1回立ち戻って考えたほうがいいんじゃない?」などの会話を、同じ目線でできるようになりました。

奥河:率直にいうと私は、これまで「理論よりも現場の感覚が第一やろ」と思う節があって(笑)。でも今回の経験を通して、その現場のことを、ちょっと抽象的な言葉にして、現場を知らない人にも伝えていく「翻訳」の大事さをすごく感じたんです。

プロジェクトの話ってどうしても「この地域だからできた」となりがち。ただ今は、そこで本質的に大事にしてきたことや、他のプロジェクトにも活かせることを、ネイバーフッドデザイン全体の考え方と照らし合わせて考えられるようになったと思います。

たとえば浜甲子園に視察に来る方に対して、以前は浜甲子園ならではの具体性がある話を中心にしていました。でも、視察に来る方は「自分たちのまちにどう活かせるか」を知りたいはず。そこで浜甲子園の話にしても、「引っ越してきた直後の人の悩みごとは……」など、どのまちにも起こりうる切り口を意識しながら話すようになりましたね。

「まちのね浜甲子園」現地視察案内を行う奧河

「イベント盛り上がったけど持続しないあるある」を抱える人へ

──帯には、「まちづくりや都市開発、エリアマネジメント、団地再生に携わる人はもちろん、自治会や商店会、マンション管理組合の関係者、そして自分の住むまちを良くしたいすべての人のための一冊」とあります。3人は、誰にどう読んでほしいですか?

田中:僕はやっぱり、地域で活動しているNPOや法人、自治会などの皆さんに、本当に読んでいただきたくて。その先のいろんな現場で「実はうちの現場では、こういうことがあったんですよ」と話が広がるきっかけになってほしいなと思うんです。

奥河:「いいまちになってほしいな」という人より、「いいまちにしていきたいな」と思っている人に読んでほしいですね。とはいえ、読み終えたら突然すべてを実践できるようなタイプの本ではないと思うので、会話のきっかけになったり、議論が起こったり、まちの中にそんな場をつくる本になったらおもしろいなと思います。

寺田:まちに関わる活動をしている方が、自分がやってきたことを「あ、こういうことだったんだ」と客観的に捉えられて勇気が持てたり、つまづいている課題のヒントが見つけられたり。あとは仲間を見つけたいとき、この本を持って「こういうことがやりたいんだよ」と、ひとつのトークネタとして使ってもらったりとか。そういう広がりが生まれていくといいですよね。

──まちで活動されている方が抱えがちな課題に対して、特にヒントになりそうなのは本書のどのあたりでしょう?

寺田:よく耳にする課題感を考えると、「主体性」や「機会」のデザインあたりかもしれないですね。

奥河:そうですね。イベント企画や“担い手”育成などの悩みは多いと思います。イベントをやっても人が集まらないとか、盛り上がるけれどその日だけで終わってしまうとか。なんとなく「盛り上がってよかった」で終わるけれど、これでいいのかなと。そういう課題感を持つ方には、ヒントになる記載がたくさんあるのではと思います。

田中:イベントやコミュニティをテーマにした本は増えていますが、「主体性」に踏み込んでいるものはあまり多くないと思うんです。そもそも、主体性をデザインするなんてできるのか?という話もありますが、そこに踏み込んで、チャレンジしていく。その参考になったらなと。

寺田意外に気づけていないのは、「未来とゴール」のデザインかもしれないですね。もし何かの企画で行き詰まって、そのなかで試行錯誤をしていても、あまりモヤモヤが解消されないとしたら、たぶん、大もとのゴール設定が曖昧だからかなと。自分たちは結局何に向かっているのか、わからなくなっていたりして。

田中:デベロッパーの方々など、「仕組み」のデザインで扱っている組織やお金の話も興味を持ってもらえると思います。持続的な活動のために大事な部分ですよね。ただその根幹にもやっぱり、「未来とゴール」がある。開発に携わる方々にも、「まちの未来像を根幹に置いた開発」という大きな文脈が伝わると嬉しいなと思います。

書籍を土台に、「地域の伴走者の伴走」も目指していきたい

── 一度ネイバーフッドデザインを体系的にまとめたことで見えた、今後より追求していきたいことは?

田中:地縁にもとづくコミュニティはやはり大切だと再認識する一方で、もう少し広く社会全体を見たときには、まだ掬いきれていない、セーフティネットの外にいる方々もいるだろうと感じています。まだ可視化できていない方々はいっぱいいらっしゃると思うと、もっと勉強しなければと思いますね。

寺田:その問題意識は私もすごくあります。ただネイバーフッドデザインは、あくまでご近所同士のつながり、共助のなかでできることに絞った、と割り切っていて。だからこそ、社会福祉協議会やNPOなど専門職寄りの方、またはセーフティネットで支援されている方々がこの本を見て何を感じられるかは、とても関心があります。本を間に、そうした方々と「どういう連携がいいんだろう」と話し合う座談会のような場を設けたいですね。

もうひとつは、今回書籍を通してネイバーフッドデザインの考え方をいろいろなまちにお届けした先で、地域でいろいろな伴走をしている方々に、さらに私たちが伴走をするところまでやっていけるといいなと思うんです。報告会や勉強会も含め、地域の伴走者に寄り添っていく。具体的な形は考え中ですが、書籍を出すだけで終わりにしてはいけないなと、改めて感じています。

奥河:HITOTOWAのように、計画段階からその後の伴走まで一貫して関われることは貴重だし、だからこそいただける信頼もある。ただ私たちも、「伴走しながら変化していくべきところ」や、「伴走者がまちから退いた後も、変わり続けられる地域であること」などの視点では、まだまだ探求しきれていない部分もあると思います。そこは日々、現場と向き合いながら考え続けていきたいです。

田中:本を出した後に、どんな仕事につながっていくのか、楽しみでもあり、緊張感もありますよね!

寺田:出版発表のメルマガをご覧いただいた方から、すでに新しい依頼もいただいていて。書籍づくりは終わりではなく、新たなスタートライン。社員一同、ますます頑張っていかないとな、と前へ進んでいく気持ちでいます。

—–

以上、出版タスクフォースメンバーのインタビューをお届けしました!

「世の中に届ける」ことを目的にスタートした出版プロジェクトですが、その過程では社内でも改めて言葉の使い方についてディスカッションしたり、“自己流”の共有を積み重ねたりと、自分たちの取り組みを第三者視点で捉え直す、学び多き機会となりました。

出版は、新たなスタートライン。この書籍をもとに、多様な方々から忌憚のないフィードバックをいただき、ネイバーフッドデザインをますますパワーアップさせていく所存です。今後のHITOTOWAにもどうぞご期待ください。

4月21日(木)、発売開始しました!

『ネイバーフッドデザイン──まちを楽しみ、助け合う「暮らしのコミュニティ」のつくりかた』(英治出版)が発売されました。詳細は以下のリンク先からご覧ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/4862763057/

プロフィール

奥河 洋介
HITOTOWA INC. 執行役員、一般社団法人まちのね浜甲子園 事務局長
被災地や住宅密集地などでのまちづくりを経験後、HITOTOWA に入社。浜甲子 園団地エリアで、住宅街におけるエリアマネジメントを推進。その他、関西エリ アにおけるネイバーフッドデザイン事業を担当。「風の民」として地域に追い風 をつくる存在でありたい。

寺田 佳織
HITOTOWA INC. シニアディレクター
大学院修了後、マンション管理会社に入社。より多角的に居住者の暮らしに関わっ ていくため、HITOTOWA に入社。ネイバーフッドデザイン事業にて、「みずべ のアトリエ」や「健幸つながるひろば とよよん」、「SHINTO CITY」等の集合住 宅エリアにおける共用施設の企画・仕組み設計、住民主体の組織立案から伴走支 援を行う。

田中 宏明
HITOTOWA INC. シニアプランナー
HITOTOWA へ入社後、ひばりが丘団地再生事業区域のエリアマネジメント業務 に従事。2020 年2月より賃貸マンション「フロール元住吉」の管理・コミュニティ サポート業務と、マンション併設の地域交流スペース「となりの.」の運営を担当。

また出版記念対談vol.1として、英治出版の編集者高野さんと、代表荒の対談も前後編で公開しています。ぜひあわせてご覧ください。

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人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題を解決します。 街の活性化も、地域の共助も、心地よく学び合える人と人のつながりから。つくりたいのは、会いたい人がいて、寄りたい場所がある街。そのための企画と仕組みづくり、伴走支援をしています。

http://hitotowa.jp/

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