2020-11-04
ピンチを変革の機会ととらえ、より柔軟で自立的な組織へ。 ──コロナ禍における学びと、これから。
interviewee:青山めぐみ、原田稜、細川瑛代
2020-11-04
interviewee:青山めぐみ、原田稜、細川瑛代
2020年の春先、新型コロナウイルスの影響で世界中にさまざまな変化が訪れました。HITOTOWAも例外ではありません。まちに暮らす人々の「つながり」づくりを手がける中、大きな変革を迫られることになりました。コロナ禍とともにあった第10期、HITOTOWAではどのようなチャレンジを行ってきたのか。そしてその背景にあった、今後にもつながる思いとは──。社員インタビュー第三弾として、青山めぐみ、原田稜、細川瑛代の3名に話を聞きました。
(左から原田・青山・細川。青山は関西支社からリモートで参加しました。※撮影時のみマスクを外しています。)
青山:私は主に兵庫県の西宮市で、浜甲子園団地再生事業区域におけるエリアマネジメント組織「一般社団法人まちのね浜甲子園」の事務局を担当しています。特に、コミュニティカフェ「OSAMPO BASE」では立ち上げから運営に携わってきました。社内では、この春に立ち上げられた組織開発タスクフォースの一員として、人事的な施策を中心に組織の開発に携わっています。
原田:僕は、東京の西新宿、神奈川の藤沢、また埼玉の朝霞にある3つのマンションでネイバーフッドデザインを担当しています。またソーシャルフットボール事業の担当として、サッカー防災®︎「ディフェンス・アクション」を推進し、行政やJリーグ・Jクラブと一緒に、防災の啓発活動にも取り組んでいますね。
細川:私も現在は主に3つのプロジェクトでネイバーフッドデザインにかかわりつつ、社内では広報タスクフォースを担当しています。プロジェクトは、東京の東葛西、また東中野のマンションにメインで携わり、神奈川の元住吉にあるコミュニティスペース「となりの.」の後方支援も行っています。
細川:3月の後半ごろから、各地域の拠点でも影響が深刻化してきて、時間短縮営業やテイクアウト対応(飲食店の場合)などの対策を行い始めました。緊急事態宣言が出されてからは一時閉鎖とした拠点もありましたが、その間も段階的な開館に向けて、今後の判断基準に関するロードマップを作成したりしていましたね。助成金の取得も進めながら、お客さんやスタッフとの関係が継続できるように工夫を重ねてきました。
一方、拠点がなく、マンションに私たちが出向いて行う回遊型のプロジェクトにもいろいろな変化はありました。回遊型ではデベロッパーや管理組合主催で行うイベントが多いので、都度対話しながら、できることを探してきて。その中で、オンライン化できるものはオンライン化してきたという感じですね。ワークショップ、マンション内イベント、入居前イベント、ウェビナーなど、いろいろな形のオンラインイベントを経験させてもらいました。
細川:社内、社外ともに、プロジェクトにかかわっている方がすごく前向きで、助けられました。初のオンライン化は私にとってもチャレンジだったんですが、特に社内のメンバーにはすごく背中を押してもらいましたね。
青山:コロナ禍で制約が生まれる中、「ピンチはチャンス」と考えて始めたプロジェクトがいくつかあり、それを総称して社内では「わくわくプロジェクト」と呼んでいて。オンライン化もその一環で、前例がないものもどんどん挑戦していこうという空気はありましたね。
細川:6月に中国のまちづくり有識者と合同で行った「日中まちぐるみ防災会議─エリアマネジメントと新型コロナ─」もまさにそうでした。もともとは、以前から交流があった中国のまちづくり団体とzoomで情報交換をしたとき、「まちぐるみでコロナ対策に取り組んでいる」など学びが多かったことが発端で。これは私たちだけで留めておくのはもったいないと、急遽オンラインでチャリティ型のシンポジウムを行うことになりました。
(日中まちぐるみ防災会議─エリアマネジメントと新型コロナ─の様子)
青山:「コロナに勝つ」ではなく、「新しい時代になるんだ」という視点が入っていたのだと思います。
原田:社内会議でもすぐにzoomを採用しましたし、その後も新たに導入するツールを検討したり、それぞれが自発的に外部のオンラインイベントへ参加して研究したりと、オンラインの知見を蓄積していっていましたね。
細川:在宅ワークを逆手にとって、家にある防災グッズを紹介するアイスブレイクをしてみたり、zoomのホワイトボード機能でしりとりをしてみたり……。春先から、オンラインを活用したコミュニケーション方法はいろいろと試しながら探ってきました。
細川:9月に東中野のプロジェクトで行ったマンション入居前イベントですね。そのマンションは、小学校の跡地を区が売却して開発が進んだという背景があり、区からは「マンションの共用部を子育て支援や地域交流の場として開放してほしい」との要請があって。一方でその場所は、住民主体ですでにさまざまなイベントが行われている地域でもあったんです。そんな特徴的なプロジェクトなので、入居前からなんとかうまく地域への橋渡しができたらと思案し、今回のオンラインイベント開催にいたりました。
結果、97世帯中、60世帯以上の方が参加してくださって。通常の入居前説明会は参加誘致が難しいと聞いたので、オンライン化で参加ハードルが下がったと実感できました。ウイルス感染の心配もなく、自宅から安心して参加できるというのも、気軽に参加できたポイントだったのではないかと思います。
またイベントの後半では、地域の方とデベロッパー、管理会社、私たちでその地域の未来について意見交換するワークショップを行ったんです。地域の方からの反応もよく、アンケートでは約8割の方が満足という結果に。前例がなくチャレンジだったのですが、デベロッパー担当者からも終了後「本当にやってよかったです!」との声をいただき、感動しましたね。
(東中野プロジェクト、暮らしのサポート説明会&おかのうえミライ会議の様子)
青山:「まちのね浜甲子園」でもオンライン化がプラスに作用したイベントがありました。「どこいこ? 保育所/幼稚園」といって、いろいろな保育園や幼稚園に通わせている親御さんの「体感」を聞けるというイベントです。去年は対面型だったところ、今年はオンラインでやってみたら、想像以上に好評で。
参加者の方に聞いてみると、子連れの外出は大変な中、オンラインなら「子どもを見ながら耳だけ貸しておき、気になったことはチャットで質問」という参加もできて助かると。参加者どうしのつながりをつくる面では難しいですが、目的を情報提供に定めれば、今後もこのイベントはオンラインで行って行くほうがよいのかも、と考えていますね。
細川:そうですね。HITOTOWAではコロナ禍に生まれたフレーズとして「オフラインでもオンラインでも、人と会う価値を信じる」や「オンライン・オフラインのハイブリッド」などがあります。オンライン化を実施する中でそのメリット、デメリットも見えてきたので、今後もオンライン、オフラインの両輪を活用しながらプロジェクトを進めていきたいですね。
原田:サッカー選手と一緒に楽しく防災減災を学ぶ「ディフェンス・アクション」というワークショップがあるのですが、これをもとにした「防災キックオフチャレンジ」というオンライン企画を、9月から10月の防災シーズンに行いました。
今回はオンライン用に内容を変え、「ボールタッチをしながら備蓄品を10個答える」ゲームを選手に実践してもらい、その動画を用意して、名古屋グランパスやその関係者のSNSで発信してもらったんです。そこから一般の方々にも「#防災キックオフチャレンジ」で動画を投稿してもらい、防災の取り組みが広がればと思いました。
さらに投稿が集まった後、zoomのウェビナー機能でその振り返りイベントも行って。参加した方からは、「備蓄は大切だと思うものの、実行できていなかった。これを機に実践していきたい」「サッカーと防災を同時に楽しめる素敵な企画だと思った」などの声をもらいましたね。
(防災キックオフチャレンジ説明会の様子)
原田:はい。ただ率直にいうと、やはり「ディフェンス・アクション」はリアルでやりたい、という思いはずっとあって。それはプロサッカー選手と直に会って、一緒にボールを蹴るという体験の価値を、これまでのリアルイベントで参加者に強く感じてもらってきたからです。だからこそ、今回のオンライン化は僕たちにとってもチャレンジでした。
ただそんな中でも、オンライン化によって企画が拡散され、認知の向上がはかれたという意味では前進を感じられましたね。これまでとは違った層にもアプローチでき、より広く防災への興味・関心を喚起できたのかなと思います。
原田:Jリーグ・Jクラブの社会課題解決プロジェクト「シャレン!」にもかかわっているのですが、こちらではJリーグ・Jクラブの方を招いたオンラインのトークセッションを行いました。これもJリーグがコロナ禍で試合のできない状況が続く中、Jリーグ・Jクラブを応援したいという思いから始まった「わくわくプロジェクト」かなと思います。
テーマはJクラブの「経営」と「地域貢献」の2本立てで行いました。Jクラブは全国に56クラブあり、それぞれの地域でホームタウン活動(地元のサッカー教室開催や、商工会のイベント参加など)を行っているんです。コロナ禍でも、地域のテイクアウト可能なお店のマップを作ったり、自宅でできるエクササイズ動画の配信など活動をつづけていたので、その認知向上もはかれればと考えました。
参加者からは、「地域活動をしているとは知らなかった」「一緒に活動してみたい」などの声もあがって。チャット欄に「もっとこういうことをしたら地域にもクラブにもよいのでは?」とアイデアが出たりもしていましたね。試合のできない時期にも、こういった発信ができたのはよかったと思います。
青山:私たちはプロジェクトベースで動いているので、以前からリモートワークが多かったんです。ただコロナ禍になって、それが「完全在宅」ワークになりました。これが一番大きな変化でしたね。仕事をひとりですることには慣れていても、完全在宅ワークではまた違うストレスがかかる……。その実感は皆あったと思うんです。
そんな中、4月には社員の発案で「バーチャルオフィス」という試みを始めました。これはzoomでオンライン上にひとつの空間をつくっておき、そこにアクセスして出社するというものです。時間帯によっている人も違えば、ビデオや音をオフにしている人もいる。でもなんとなく、同僚の存在を感じることができるんです。勤務の監視というよりは、リモートワークで補えない雑談をしたり、気軽な相談をしたりするための空間ですね。
青山:そうですね。社内で効果を実感したこともあり、一部のプロジェクト現場でもスタッフ間のコミュニケーション不足を補うために導入し、改善をはかることができました。
また社内では同時期に、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)のタスクフォースが立ち上がり、会社としてこの情勢を乗り切っていくために、全社的な組織の見直しが始まりました。
その中でも、在宅ワーク下の「社員の心身の健康を保つ」ことは重要だという話になり、バーチャルオフィス以外にも体制を整備したんです。たとえば、それまでは対面で行っていた月1回の全社会議「HITOTOWA NOW」をオンライン化し、週1回に頻度を増やして行うように。また、以前は2か月に1度、対面で開催していた社内勉強会「HITOTOWA未来塾」もオンラインで開催するようになりました。結果的に、コロナ禍で社員間のコミュニケーションがすごく増えたと感じています。
青山:ええ。私は入社して3年半ほど経ちますが、今が一番、他の社員のプロジェクトについて知ることができているなと思います。
青山:コミュニケーション活性化の施策実施と同時期に、組織開発・広報・出版という3つのタスクフォースも発足し、社員は基本的にどこかのタスクフォースに入る形となりました。組織開発タスクフォースでは、たとえば組織体制や評価制度について社員にアンケートをとるなど、人事的な制度の見直しも始めましたね。
たとえば“あなたがやっていることは、どこかで誰かが見ているよ”という意味で「おてんとさま」という制度をつくったり。これは社員間で、「この人すごくいいことしたなぁ」と思ったら、その感謝やフィードバックを専用フォームに入力して送りあうというものです。
青山:本格的な運用は11期からなので、まだ実感としてはあまりないかもしれないです。どうでしょう?
原田:タスクフォースなど新しい役割が出てきている中で、組織が変わり始めているのは実感していますね。その変革のプロセスがまた、HITOTOWAらしいと思っていて。トップダウンではなく、皆の意見を聞き、反映しながら進めてくれる。
細川:タスクフォース制が始まったことで、HITOTOWAというものに人格が出てきたような気がします。以前からプロジェクトでは各自が主体的に動いていたと思うのですが、今は社内の組織や制度についても、主体的に考えられるブレインが増えたというか。代表の荒だけでなく、HITOTOWA全体にその役割が移ったという感じがしますね。
青山:ここ1、2年で人数が増えてきた中、いわゆるピラミッド型の組織になっていかないように変えていこう、という意識はあります。若手のメンバーも含め、それぞれが自立的に働ける、セルフマネジメント型の組織にしていけるのが一番いいかなと考えていて。
そのために「バディ制度」といって、年齢や仕事内容が近い人とペアになり、月1程度で近況や目標を共有するというしくみも8月から始めました。バーチャルオフィスもそうですが、気軽に相談しあえる関係をつくることは、セルフマネジメント型の組織に欠かせない要素だと考えていますね。
細川:そうですね。私は原田とバディなんですが、プロジェクトが重なっていなかったのでこれまで接する機会は多くなかったんです。でも話してみると、異なるプロジェクトでも共通項があったりして。新たな視点で情報交換ができて嬉しいです。
原田:たしかに。それにプロジェクトに対する悩みはもちろん、個人の夢みたいなところまで話せる関係が、組織開発によってどんどん増えていっている実感はありますね。
青山:コロナ禍の取り組みを経て、逆に社員のコミュニケーションが深まったというのは学びでした。それまでもリモートワークが基本だった中で、「ああ、気軽に共有できる場があればこんなにも強くなるのか」と精神面でも感じましたし、物理的にパワーアップしたような感覚もあります。
組織体制は、今ようやくスタートラインに立ったところ。皆で作っていくこのフェーズがわくわくしますし、そこに携われるのはすごくやりがいがありますね。また、この規模だから、このメンバーだからこそできるルール設計がある。その良さを生かして、さらに自立的で個人が強い組織、かつ柔軟性を持った組織にしていければと思います。
細川:私は入社して1年ほどなのですが、そのうち半年以上がコロナ禍という状況で。言葉にするとありがちかもしれませんが、「あきらめずにチャレンジする」という姿勢を、この半年でさらに教えてもらったなと思うんです。
今回お話できた事例は、それらの挑戦のほんの一部。たとえば別事業「HITOTOWAこども総研」でも、コロナ禍でありながら新しい調査研究事業を受託するなど、メンバーがチャレンジしている姿勢はいたるところにありました。だれも正解がわからない中、情報を集めて考え、突破していく。ひとりの人間としても、勇気がわくような時間でしたね。
なので今後は私自身も、もっとレベルアップしていきたい。プロジェクトのメイン担当は自分で舵切りしていける風土があるので、これからは自分のやってみたいことを周りに相談しながら、いっそうチャレンジしていきたいと思います。
原田:これだけ世の中が変わりつつある中、社会課題や、その解決のアプローチも変わってくる部分があると思います。だから常に動きはとめずに、変化に対してどんどんチャレンジを続けていきたいですね。個人としても、自分ができること、また興味のあることを突き詰めていきたいなと、最近すごく思っています。
青山:一緒に働いていても、各個人の興味やライフプランまでは、お互いにまだ深く知らないのが社内の現状だと思います。コロナ禍を経てビジョンに加わった「かかわる人が幸せな会社」を実現していくためにも、今後はさまざまな制度を通じて少しずつ、歩みを進めていきたいです。
社会情勢の変化も変革の機会ととらえ、次々とチャレンジを続けてきたHITOTOWA。そしてそのチャレンジは、これからも続いていきます。来たる2020年12月24日には創立10周年を迎えるにあたり、新たな挑戦も計画中とのこと。ますますパワーアップしていくHITOTOWAにご期待ください。
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