2026-09-16
会いたい人がいる“関西”を未来へ。ご近所の関係性がもたらす、ポジティブな変化とその軌跡【15周年イベントin神戸 「BE NEIGHBOR」レポート前編】
interviewee:
2026-09-16
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2025年12月24日に15周年を迎えたHITOTOWA。2017年からは関西地域でのプロジェクトが起ち上がり、ミッションである「都市の社会環境課題の解決」に取り組んでいます。
この記事では、2026年6月19日に神戸市の東遊園地内にあるURBAN PICNICにて開催した周年イベント「BE NEIGHBOR 〜会いたい人がいるまちを、未来へ」で語られた内容をレポートします。

節目の年を、お世話になった方々と迎えたい純粋な気持ちとともに、関西におけるネイバーフッドデザインの軌跡を共有したい。そして、複雑化する社会課題を背景に、これからのネイバーフッドデザイン(ご近所との関係性)をアップデートし合い、未来のまちづくりに寄与することを目指した場でもありました。
関西事業部では、外部パートナーも巻き込んだ自主開催のイベントは初めてでしたが、当日運営では、関西に拠点を置く、奥河、宮本、葛山、野﨑の4名をはじめ、首都圏メンバーや代表 荒も駆けつけた幕開けとなりました。

初夏の夕暮れ時にご招待したゲストの方々は、HITOTOWAがこれまで事業を共にした自治体や企業、パートナー事業者30名以上。受付で顔を合わせるなり、近況報告を兼ねた挨拶が始まるような方々ばかりで、関西での10年間のつながりの深まりを感じました。
イベントプログラムには、プレゼンテーションだけでなく軽食やドリンクを片手にゲスト同士が交流できる時間も。挨拶に立った荒の「過去を振り返るだけではなくて、皆さんの新しい一歩が踏み出せるような場になるように、皆さんとたくさんお話ができればと思っております」という言葉通り、ここだからこそ聞くことができる情報交換の場にもなり、あちらこちらからにぎやかな声があがっていました。

目次
冒頭の挨拶に続いて、HITOTOWAの事業メソッドの紹介ではHITOTOWAがめざす「ポジティブな変化への貢献」が語られました。
奥河:プロジェクトを担当するにあたって、地域特性はさまざまです。そのなかで我々がネイバーフッドデザインを掲げ、基本的に一貫して持っている考え方というのを、このメソッドに整理をしています。
どんなプロジェクトでも、まずはそのエリアのことを丁寧に調査分析し、理解し、プロジェクト終了以降の地域の未来像をきちんと描くことが重要です。そのうえで、我々が関わるなかでのゴールを設定します。
次にどんなコンセプトでプロジェクトに取り組んでいくのかを決定します。そのうえで、コンセプトに基づき、必要な機会やイベント、主体となる人や組織、求められる場所、解決すべき課題、支える仕組みを意識しながら、プロジェクトを展開しています。

奥河:一つひとつのプロジェクトに向き合いつつ、さらにはプロジェクト対象領域を超えて、広域のまち、周辺エリア、自治体にまで、ポジティブな変化を広げていきたいと考えています。さらにプロジェクトに関わることによって、デベロッパーのなかにも新しい変化が生まれたり、行政のなかで新しい取り組みになったり、変化を促していくことを大切にしながら、取り組みを進めています。
~まちのね浜甲子園(団地エリアにおけるエリアマネジメント)の伴走、団地集会所の検討業務~
プログラムの前半は、来場ゲストの方々とともに達成したプロジェクト、あるいは現在進行中のプロジェクトでどのような「変化」が起きているかの紹介から。まず、マイクを握ったのは奥河。関西での事業立ち上げのきっかけとなった「浜甲子園団地エリアにおけるエリアマネジメント運営業務」通称「まちのね浜甲子園」での取り組みから始まりました。
UR団地の建替えに伴って、そこに新たにできる分譲マンション、戸建てを含めた一体型のエリアマネジメント組織を立ち上げ、HITOTOWAが6年間常駐して運営。「HAMACO:LIVING」「OSAMPO BASE」「HAMACO:CLASS」といった、性質の異なる拠点も生まれ、2023年より運営を住民に引き継いでいます。

奥河:我々が大事にしたのは、地域住民との1対1の対話による関係性づくり。そのなかで企画が生まれ、地域課題の改善・解決につながり、それを継続的に支える組織と財源確保の仕組みができるプロセスを丁寧に進めてきました。実は4年前に地域住民の皆さまに引き継いで、運営が行われている状況です。むしろ我々がいた時よりも進化していて、年間予算 1,600 万円程度の事業規模で運営できる仕組みになっています。
ちょうど先日、国土交通省の「第5回まちづくりアワード功労部門」を「一般社団法人まちのね浜甲子園」として受賞しました。本イベントでも、代表理事の井川舞さんをはじめ、立ち上げ時から一緒に汗をかいていただいた事業者の皆さまにもご来場いただいたので、共に、浜甲子園に残せた地域の営みを喜び合いたいなと思っているところです。

HITOTOWA関西事業部では他にも、「浜甲子園団地センターB街区運営方針の検討業務」も進めており、中央集会所をリニューアルするためのサウンディング調査や、5回の社会実験「よろかパーク」の実施を経て、検討を行いました。
野﨑:「よろかパーク」でセンターB街区の改修後の姿を試すことで、住民の方々や関係者が一緒に未来を語り合える機会が生まれました。最初は見向きもされなかったセンターB街区も、全5回の「よろかパーク」を通して認知され、改修の機運がどんどん高まったと感じます。
私たちの業務終了後、センターB街区の改修が完了するまでは2~3年の期間が空きます。今後は、高めた機運や認知度が維持されることがポイントになると感じます。「みんなで作った」「ここのリニューアルに関わった」と感じてもらうことで愛着が生まれ、また行きたくなる場所になる第一歩と思っています。建物の完成までのプロセスデザインに、これからも期待したいです。

~ASMACI新長田プロジェクト(ファインレジデンス神戸新長田)~
次にプレゼンしたのは宮本。病院×住宅の複合施設を地域医療の新しいランドマークとして育てる「ASMACI神戸新長田プロジェクト(ファインレジデンス神戸新長田) 」です。マンションの中に病院の施設も入るため、病院従事者も巻き込みながら「病院と共に暮らすマンション」という見識(ナレッジ)を、丁寧に住民へ届け、地域の緩やかなコミュニティを育んできたプロジェクトです。

宮本:この物件の特徴は、入居前からしっかり住民の声を聞いて、マンションのコミュニティづくりのプログラム開発に活かし、引き渡しと同時に、この物件の防災マニュアルを配布するといった入居前からの仕掛けにポイントを置いて、住民同士が自然と関わり始める「機会のデザイン」を行ってきた点です。
また、本日来場いただいた、こどもみらい探求社の小笠原舞さんをはじめ、この地域で活動されている地域プレイヤーの方などとプログラムを運営することで、本当に新長田の暮らしを楽しんでくださっている皆さんと共に進めてきたプロジェクトです。

宮本:マンション住民と病院従事者が地域の中学生と一緒に演奏会を開くというアクションが生まれ、さらに、その姿を見た他の病院従事者も得意なピアノを活かして演奏を披露する。このような自分の「好き」や「何かやってみたい」ということが表現できる場に育っていきました。

宮本:病院の敷地の一部を地域住民も使えるように開放し、マンション住民を含む地域の人との交流が生まれる場として活用していきたいという、病院が目指したい状態を事前に把握できたこともポイントでした。
まちで暮らすみんなの得意ごとやスキル、好きなことなど、自分たちが持っている「資源」をみんなのために「活かす」。そういうコモンズ(まち全体の共有財産)を持ち寄ることで、暮らしが健やかになる場として育っていったプロジェクトでした。
~名谷TOCOTO(トコト)プロジェクト~
続いて、神戸市須磨区の名谷駅前で関わっている「名谷TOCOTO(トコト)プロジェクト」についての紹介を宮本と葛山から。地域愛着の醸成をテーマに、「まちで活動している人との出会い」や「まちを楽しむ場の提供」に取り組んでいます。

葛山:このプロジェクトでは、地域への関心度や目的に合わせて3つのアプローチをとっています。1つ目は地域活動にあまり興味のない方たちにも、地域の活動を知ってもらうきっかけになるトークイベント「トコトトーク」を開催しています。2つ目が地域活動にすごく関心があるけど、時間を割けていないとか、関わり方がわからないという人に向けた伴走支援型の「トコトラボ」です。そして、3つ目が地域での思い出作りと防災イベントを掛け合わせた「トコトデイ」。この三本柱で地域住民も巻き込んだ取り組みを、地域にある拠点を使って展開していく挑戦をしています。
宮本:これまでHITOTOWAでは、ご近所との関係性、つまり人と人や団体との「顔の見える関係性づくり」に取り組んできました。TOCOTOプロジェクトも同様ではありますが、ご近所との関係性に加え、人と場所・人とまちの接点をつくることで、より地域の愛着や暮らしの豊かさにつながると考えています。ご近所付き合いもまちの価値も、関係性をデザインすることで経年良化していく。この考えや仮説を根幹に、イベント企画から調査設計、広報活動などを展開しています。

宮本:名谷駅前広場で開催しているトコトトークで印象的だったのが、高校生が学校帰りに立ち寄ってくれ、登壇いただいたゲストの自然体のトークを聞いて、「人との距離感ってそんなに頑張らなくていいんやって思った」と、発言してくれたことです。イベントは交流が生まれるだけでなく、誰かを勇気づけているんだなと気がついた瞬間でした。

葛山:トコトラボで印象に残っているのは、自分のやってみたいことをやり切った参加者の皆さんが自然とつながっていったことです。「みんなで紙ヒコーキを飛ばしたい」「みんなで好きを語り合いたい」という、やってみたい思いをラボに参加された方は見事に形にされました。その共通体験があったからこそ、私が提案しなくても自主的に LINE を交換したり、歓談が生まれたりするといった日常のつながりが生まれたことが何より嬉しかったですね。このスマホを出して集まっている写真は連絡先交換をしているのを私が遠くから撮影した写真なんですよ。

~JR島本駅西コミュニティ醸成プロジェクト~
最後に葛山・野﨑が紹介したのは、島本町で取り組んでいるJR島本駅西コミュニティ醸成プロジェクト。「島本まちごとプレイパーク」「桜井せせらぎコミュニティ」「島本駅西ネットワーク」の3本柱を中心にコミュニティ醸成を図っています。

葛山:プロジェクトの舞台となる島本町は豊かな自然が残るまち。畑だった場所に新しく500世帯が転居されるマンション・戸建が立ち並びます。元々島本町で暮らしている人も新しく島本で暮らす人も、豊かな自然をもっと身近に感じて楽しめる機会があればという想いから生まれたのが、「島本まちごとプレイパーク」というコミュニティイベントのコンセプトでした。島本まちごとプレイパークでは遊びを通して楽しむ人が集まることで人と人の関係性を育んでいくことを目指しています。

野﨑:また、新しく500世帯が転居されるマンション・戸建があり、従来では引越された方はすぐに新しく立ち上げた住民自治会の運営等をやらなければいけなかったところを、まず我々が事務局の運営を行い、無理なく参加できる体制を整えた上で、住民に引き継ぐことを想定しています。

関西の推進メンバーそれぞれによるプレゼンからは、限られた時間に収まり切らない気持ちが会場の皆さんにも伝わったのではないでしょうか。何より、各プロジェクトを共に育ててきたクライアントや協力団体の皆さんと、この節目の時間を分かち合い、称え合う時間になったことは、メンバーにとって大きな喜びとなりました。
後編では、ゲストスピーカーに、まちに関わるさまざまな場づくりを実践し続けている山納洋さん(大阪ガス都市魅力研究室)を迎えたトークセッションの内容をお届けします。
HITOTOWAがまちで果たしてきた役割とは。さらに、行政・企業・市民がもつ文化の交わりによる変化とは――?現場に合わせてアップデートし続ける伴走支援についてレポートします。
【事例紹介プロジェクト紹介ページ】
■ 浜甲子園団地エリアにおけるエリアマネジメント運営業務
■ 浜甲子園団地センターB街区運営方針の検討業務
■ ASMACI神戸新長田プロジェクト(ファインレジデンス神戸新長田)
■ 名谷TOCOTO(トコト)プロジェクト
■ JR島本駅西コミュニティ醸成プロジェクト
<後編に続く>
【後編の目次】
・「持ち寄る文化」を育むための「現場解像度」
・既存組織へのリスペクトと「選択肢としてのコミュニティ」
・「自走」「手離れ」の解像度を上げる
・正解を持ち込まず、現場で変化し続ける
・私たちは関係性をつくり、文化を書き換えていける
(取材・執筆・編集:東善仁(合同会社ユブネ)/撮影:中谷 紀美子)
HITOTOWAの声
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